オムロンヘルスケアは、50代~60代の高血圧患者の男女1036人を対象とした血圧管理に関する意識調査結果を発表した。
調査では、「もっと早くから家庭で血圧測定を始めておけばよかった」と回答した人が4割で、3人に1人が高血圧を指摘されても「一時的な症状で時間が経てば治ると思った」との理由でそのまま放置していることが判明した。
日本の高血圧人口(20 ~70代)は約4300万人と推定されており、日本人のおよそ3人に1人が高血圧といわれている。高血圧は、そのまま放置すると脳卒中や心不全などの命にかかわる疾患を引き起こす場合もある。だが、高血圧は自覚症状がほとんどないため見過ごしやすいのが現状だ。
今回の調査では、高血圧の発症時とその後の意識と行動の変化について調べた。その結果、男女で若干の違いはあるものの40代から高血圧を指摘される人が多かった。
また、高血圧を指摘された後の行動については、約3人に1人が「そのまま放置してしまった」と回答し、その理由として「一時的な症状で時間がたてば戻ると思った」が最も多く挙げられた。
さらに、半数以上の人が「高血圧は発症してしまうと治らない場合もある」ことを知らない、4割以上の方が「もっと早くから家庭での血圧測定を始めていればよかった」と回答するなど、高血圧に関する知識を正しく理解することの大切さが改めて確認できる結果となった。
調査と調査結果の概要・詳細、考察は、次の通り。
【調査の概要】
・調査目的 :血圧管理に関する意識調査
・調査対象 :全国の高血圧患者 50代~60代の男女1036人
男性50-59歳258人/60-69歳260人/
女性50-59歳255人/60-69歳263人/
・調査エリア:全国
・調査方法 :インターネット調査
・調査期間 :2021年9月24日~28日
【調査結果の概要】
- 血圧が高い、高血圧の可能性があると気が付いた・言われ始めた年齢は男女間で差があるものの、ともに40代から増加傾向、50代が最も多い結果に。
- 30代~40代当時にあてはまる生活習慣は「ほぼ運動していない」が7割。一方で「喫煙していない」「規則正しい生活」など健康に配慮していた人も6割以上。
- 約3人に1人が血圧が高いと診断されたが、そのまま放置してしまった経験あり。その理由は「一時的な症状で時間がたてば戻ると思った」。
- 高血圧診断前に、高血圧は治らない場合もあることを知らなかった人は半数以上。
- もっと早くから家庭での血圧測定を始めておけばよかったと思う人は4割にのぼる。
- 高血圧になり大変だと思うことは「通院」「薬の服用」「塩分管理」がトップ3。家庭での血圧測定を継続することが難しいと思っている人はわずか3割。
- 高血圧の発症後に罹患した疾病は「糖尿病」が最も多く、脳血管・心臓に関する疾患の発症も。
【調査結果の詳細】
(1)血圧が高い、高血圧の可能性があると気が付いた・言われ始めた年齢は男女でも差はあるが40代から増加傾向、50代が最も多い結果に。
血圧が高い、高血圧の可能性があると気づいた・言われ始めた年齢は、男性は30代後半、40代から徐々に増え、女性では45歳~、50歳~が最も多い結果となった。女性の高血圧は、更年期症状とも関連している可能性が高いため、45歳以降に急激に数が伸びていることが考えられる。
(2)高血圧患者が30代~40代当時にあてはまる生活習慣は「ほぼ運動していない」が7割。一方で「喫煙していない」「規則正しい生活」など健康に配慮していた人も6割以上。
30代~40代当時のあてはまる生活習慣を質問したところ、「ほぼ運動していない」と回答した人が70.8%となった。「ストレスの多い生活」や、「週3日以上の飲酒」も40%を超えており、生活習慣の乱れていた人が一定の割合で存在していることが見受けられた。
一方で、「喫煙していない」「規則正しい生活」と回答した人も6割以上おり、健康に配慮した生活を心がけていた人も多いことがわかった。
(3)約3人に1人が血圧が高い・高血圧と診断されたが、そのまま放置してしまった経験あり。その理由は「一時的な症状で時間がたてば戻ると思った」。
血圧が高い・高血圧と診断されたが、そのまま放置してしまった経験があるかを質問したところ、「はい」が38%となった。その理由として、「一時的な症状で時間がたてば戻ると思った」が最も多く51.6%、「仕事が忙しかった」が35.1%であった。
(4)高血圧診断前に、高血圧は発症してしまうと治らない場合もあることを知らなかった人は半数以上。
高血圧診断以前に高血圧は発症してしまうと治らない場合もあることを知らなかった人は、半数以上(54%)であった。高血圧発症前に、高血圧に関しての知識を持っている人が少ないことが判明した。
(5)もっと早くから家庭での血圧測定を始めておけばよかったと思う人は4割にのぼる。
もっと早くから(30代~40代)家庭での血圧測定を始めておけばよかったと思ったことがあるかを質問したところ、40%が「はい」と回答した。高血圧と関係性が深く、疾病発症リスクが高いとされている「肥満度」との関係性を調べるためBMI数値(BMI=体重÷身長の2乗で算出される値)を調査したところ、もっと早くから(30代~40代)家庭での血圧測定を始めておけばよかったと思う人は、低体重や標準が約30%程度にとどまる中、肥満2(BMI=30~35)が51.8%と最も多く続いて肥満3(BMI=35~40)が48.9%となり、低体重や標準の層と10%以上の差が生じた。
なお、同調査の回答者の約半数近い47%が肥満1~4に該当している。(※健康診断などで判定されている肥満度に関しての回答より)。
(6)高血圧になり大変だと思うことは「通院」「薬の服用」「塩分管理」がトップ3。家庭での血圧測定を継続することが難しいと思っている人はわずか3割。
高血圧になり大変だと思うのは「定期的な通院」が最も多く55.6%、「降圧剤の服用」が47.9%、「塩分の管理」が34.4%という結果となった。
次に、「血圧測定」と23.7%が回答した。家庭での血圧測定は、通院時に医師から日々の血圧測定値の提示を求められる場合が多く、治療や経過観察のためにも大切な役割を担っている。
そこで、家庭での血圧測定において、継続する難しさがあるかを質問したところ、70%の人が「いいえ」と回答しており、継続が難しいと感じている人は少数であることがわかった。
(7)高血圧の発症後に罹患した疾病は「糖尿病」が最も多く、脳血管・心臓に関する疾患の発症も。
高血圧の発症後に、罹患した疾病を質問したところ、「とくになし」が68.8%であったが、「糖尿病」が9.6%、「脳血管に関する疾患」が6.8%、「心臓に関する疾患」が6.7%となり、高血圧と関係が大きいとされている疾病が挙がった。
肥満度でみると、「糖尿病」の数値が高くなっており、高血圧と肥満、糖尿病が関係していると推測できる。高血圧は、早期からのケアで、高血圧がもたらす疾病の予防も可能なため、家庭での血圧測定や通院を推奨する。
◆島本和明日本高血圧協会理事長のコメント
放置してしまう要因の一つは「高血圧への誤った認識」
今回の調査結果から読み取れるように、血圧が高い・高血圧と診断された人のうち、一定の割合で放置してしまっている方が存在している。これは、非常に頭の痛い事実である。なぜ放置してしまうのか、その理由は、調査回答とも重複しますが、高血圧を正しく理解できておらず、「一時的な病気で時間がたてば治るという誤った認識を持っている」、「自覚症状が無い」、そして「投薬治療を始めると一生、薬を飲み続けなければならないという重責を少しでも先延ばしにしたいという心理」があるためである。当然だが、放置して良いことは一つもない。
減塩と運動習慣の改善で薬が不要になることも
高血圧治療には、減塩と運動習慣の改善など大きな努力が必要だが、早期にこれらの努力をしっかり行うと、薬を必要としなくなるケースも多分にある。調査においても高血圧患者にとって治療の大変さは「通院」「薬の服用」「生活習慣の改善(減塩・運動習慣)」を挙げる人が多かったようだ。
血圧を知る事の大切さ
高血圧と診断をされたら、そのまま放置せず家庭で継続的に血圧を測定し、自分の血圧値の平均値を知ろう。その値と病院での計測値の両方を参考に、医師が高血圧症、仮面高血圧、白衣高血圧、正常値血圧のどれに当てはまるかを診断することで患者さんが安心し治療に臨める。
また、高血圧を発症した人は、正常値の人と比較して2倍も「糖尿病」になりやすいというエビデンスがある。脳卒中や心臓病も高血圧との関連性が高い疾患である。こうした疾患を予防するためにも、血圧測定をしながら罹患に気を付けていくことが重要である。
男性は30歳から、女性は40歳から家庭で血圧計測をはじめよう
今回の調査結果でも、もっと早くから計測しておけばよかったという回答が4割にも上っているが、自覚症状がなく、健康診断時に血圧が高めですねと指摘されるなどのきっかけがない中ではなかなか家庭で継続的に血圧測定をしようとはなりにくいものである。
高血圧を発症するタイミングは男女で異なり、男性は女性よりも早く発症する傾向があるものの、男女ともに50歳を超えると半数以上が高血圧になるといわれている。従って、男性は30歳から女性は40歳から家庭での血圧計測を開始することを強くお勧めしたい。
オムロンヘルスケアでは、1973年に血圧計の1号機を発売して以来、世界110以上の国々で家庭用血圧計を展開し続け、世界累計販売台数が3億台に達した。
3億台達成までに重視してきたのは「家庭での血圧測定」の普及である。血圧は一日を通して常に変動している為、健康診断や通院時の血圧値だけでは詳しい状態を把握することは困難である。高血圧の兆候を早期に発見し改善するためには、家庭で血圧を継続的に測り、血圧状態の詳しい把握が重要である。
同社では、これからも循環器事業の事業ビジョンである「脳・心血管疾患の発症ゼロ(ゼロイベント)」の実現に向けて、誰もが家庭で簡単に正しく測定できる血圧計の開発とともに、遠隔診療サービスなど新たな事業にも積極的に挑戦していく。