相同組換えノックイン手法の新たなスタンダードとして期待
早稲田大学理工学術院の新井大祐講師、中尾洋一教授らの研究グループは、ゲノムの狙った場所にドナーDNAを挿入するノックイン新手法(BiPoD、Biallelic knock-inassisted by Pol θ and DNA-PK inhibition)を開発した。同手法は、DNA修復の仕組みを一時的にブロックすることで、部分的な挿入によるゲノム破壊が起こらない正確性と効率性が高い新たな相同組換えノックイン手法だ。
従来のノックイン手法は効率性の低さに課題を抱え、研究の足枷となっていた。さらに、ドナーDNAの一部分だけが頻繁に挿入するため、元々の遺伝子を破壊したり検出が困難になったりすることが判った。 そこで今回、同研究グループは、従来の手法よりも相同組換えの効率を高めつつ、それ以外の仕組みによるドナーDNAの挿入をほぼ完全に抑えられる新たな手法を確立した。
これにより、部分的挿入などによるゲノムの破壊が起こらない正確で安全なノックインが可能になった。また、新手法は90%超の高い確率で2組の染色体両方に同時にノックインさせることにも成功した。
正確性と効率が高まった新手法は、マウスES細胞を用いた研究の加速を可能とする。さらに、簡便な手法で特別な機器や高価な試薬を必要とせず、導入が容易なため、相同組換えノックイン手法の新たなスタンダードとしての広い普及が期待できる。
なお、同研究成果は、Springer Nature社『Scientific Reports』のオンライン版に9月13日(現地時間)に掲載された。