日本人の約8割が心不全の病態を知らず理解度は欧米など9ヵ国中で最下位  アストラゼネカがリアルワールド研究結果公表

 アストラゼネカは20日、「心不全」の日本における現状と「心不全」を併発しやすい病気として挙げられる2型糖尿病について、同社が行ったリアルワールド研究結果を公表した。
 研究結果では、日本人の約8割は心不全がどんな病気か答えられず、心不全の理解度はアメリカやイギリスなど9ヵ国中最下位であった。
 また、「大規模データベースを用いた多国籍研究」で早期2型糖尿病患者の約5人に1人に「心不全」が発症していることが判明した。「がん」に次いで日本人の死因第2位とされる心疾患のうち、約4割を占めているのが「心不全」で、発症すると5年生存率は50%、1年以内の再入院率は24%と、予後(将来どうなるか)が非常に悪い。
 アストラゼネカが世界心臓連合と連携して行った調査では、「心不全」がどのようなものか理解している人の割合は9か国中で日本が最下位であった。9か国は、イギリス、イタリア、ドイツ、スペイン、アメリカ、カナダ、ブラジル、日本、中国。
 別の病態と誤解している人が半数程度いることから、日本では多くの人が「心不全」について正しく理 解できていないことが推測される。
 また、アストラゼネカが早期2型糖尿病患者を対象に行った大規模データベース研究「CARDIORENAL-2試験」では、日本人の早期の2型糖尿病患者において初めて起こしたイベントは、糖尿病の合併症として広く認知されている大血管障害である脳卒中や心筋梗塞より、「心不全」の発症が多かった。
 「CARDIORENAL-2試験」は、心血管または腎疾患を合併していない2型糖尿病患者において、追跡期間中に発症した最初の心血管腎イベント(CVRD)、およびCVRDを起こした人の死亡リスクとの関連性について調べたデータベース研究だ。
 対象は、日本、イギリス、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの6ヵ国における医療記録に集積された2型糖尿病患者117万7896名(うち、心血管または腎疾患非合併の2型糖尿病患者77万2336名)で、平均4.5年間追跡した。 CVRDイベントについては、外来および入院患者全員を対象に評価を行った。また、CVRDイベントと死亡リスクとの関連性については、心血管または腎疾患を合併していない患者群を比較対象として、年齢・性別調整Cox回帰分析によりリスクの解析を行った。
 「心不全」は、複数の原因が重なり、発症する。その原因としては、高血圧、心筋症(心臓の筋肉自体の病気)、心筋梗塞、弁膜症(心臓の中の血液を正常に保つ弁が狭くなったり閉まらなくなったりする病気)、不整脈、糖尿病などが挙げらる。2型糖尿病では、一般的に合併症として「動脈硬化」から「大血管障害(心筋梗塞や脳卒中)」が発生する。

日本人の 糖尿病患者 (299,965人) ※腎・心血管疾患 未発症者


 ところが、アストラゼネカが2型糖尿病患者を対象に行った大規模データベースを用いたリアルワールド研究では、腎・心血管疾患を発症していない日本人の2型糖尿病患者(29万9965名)において、初めて起こすイベントは「心筋梗塞」や「脳卒中」よりも「心不全」のほうが多いということが判った。
 また、慶應義塾大学が行った静岡県の国保データを用いた研究によると、初めて経口血糖降下薬の処方を受けたこれまで心不全や、1型糖尿病の記録のない早期2型糖尿病患者において、「心不全」での入院は心筋梗塞より多く、脳卒中と同様であることが示された。
 心不全は、下図のように症状によってステージがA~Dまで分かれており、それぞれのステージで心不全リスクを増やさないもしくは心不全を悪化させない治療を受けることが重要となる。


 心不全の治療としては、薬物療法やペースメーカー等によって心臓の負担を減らすもの、心臓の機能を補 助するものなどがある。標準治療薬として用いられる薬は、血圧上昇・血管収縮・体液貯留・心筋変性などを抑え、心臓の負担を減らす薬剤、過剰な交感神経活動を抑制、脈拍を低下し、心臓を安め回復させる薬剤、尿排泄を促し体液貯留・うっ血症状を改善する薬剤、心臓の収縮力を高め、低灌流症状を改善する薬剤などがある。
 近年では、研究が進んで新たな薬剤が複数登場している。

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