maribavir P3試験サブグループ解析でも一貫した臓器移植後のCMV血症消失効果確認  武田薬品

 武田薬品は8日、 経口投与可能な抗CMV化合物maribavir(TAK-620)について、P3試験(SOLSTICE試験)の固形臓器移植(SOT)に関する新たなサブグループ解析結果として、心臓移植、肺移植および腎移植を受けた患者において一貫したCMV血症消失の有効性を示したと発表した。同解析は、既存の抗ウイルス療法を受けた患者の2倍以上の割合でCMV血症の消失を達成したことを示した過去のデータを基に実施されたもの。
 今回の試験結果は、オンラインで開催された2021年米国移植学会議(American Transplant Congress:ATC)で報告された。
 FDAによる最近のmaribavirの新薬承認申請の優先審査指定により、同社は移植後のCMV感染の治療に存在するアンメットニーズへの取り組みをさらに一歩前進させる。
 CMVは、ヒトに多く感染するベータヘルペスウイルスであり、さまざまな成人集団の40~100%で感染歴を認める血清学的エビデンスがある。通常、体内に潜伏し、無症候性だが、免疫抑制期間中に再活性化するケースがある。免疫機能が低下した人では、重篤な疾患を発現する場合があり、こうした人には造血幹細胞移植(HCT)や固形臓器移植(SOT)を始めとする、さまざまな種類の移植に関連した免疫抑制剤の投与を受けている患者さんも含まれる。
 1年あたり推定20万件の成人移植のうち、CMVは移植後に最もよくみられるウイルス感染のひとつで、推定発現率はSOT患者で16~56%、HCT移植患者で30~70%に上る。
 移植後患者でCMVが再活性化すれば、移植臓器の喪失などの深刻な結果に至る可能性があり、極端な場合では死に至る場合もある。
 移植後のCMV感染に対する既存の治療法は、用量調節を必要とすることや、ウイルスの複製を十分に抑制できない可能性がある副作用を発現するケースがある。さらに、既存の治療法では、投与のために入院を要することや入院が長期化する可能性がある。
 P3試験(SOLSTICE試験)では、ベースラインで難治性/抵抗性(抵抗性無しも含む)(R/R)サイトメガロウイルス(CMV)感染のSOT患者において、投与8週時(投与期終了時)でCMV血症の消失が達成された割合は、既存の抗ウイルス療法群(治験責任医師が定めた治療法[IAT]で、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネットもしくはシドフォビルのいずれか1つまたはその併用)(26.1%、18/69)と比較して、maribavir投与群では2倍以上(55.6%、79/142)であった(調整群間差[95%信頼区間]:30.5%[17.3, 43.6]、p<0.001)。
 発表された結果は、心臓移植、肺移植および腎移植を受けた患者においてmaribavir投与の一貫した有効性を示していた。
 移植の種類ごとの主要な結果は次の通り。

 ◆R/R CMV感染の肺移植において、CMV血症の消失が達成された割合は、既存の抗ウイルス療法群の13.6%(3/22)と比較して、maribavir投与群では3倍以上の47.5%(19/40)であった(調整群間差[95%信頼区間]:38.2%[16.89, 59.53])。

 ◆R/R CMV感染の腎移植において、CMV血症の消失が達成された割合は、既存の抗ウイルス療法群の34.4%(11/32)と比較して、maribavir投与群では1.5倍以上の59.5%(44/74)であった(調整群間差[95%信頼区間]:26.7%[7.48, 45.85])。

 ◆R/R CMV感染の心臓移植において、CMV血症の消失が達成された割合は、既存の抗ウイルス療法群の11.1%(1/9)と比較して、maribavir投与群では42.9%(6/14)であった(調整群間差[95%信頼区間]:30.7%[-1.72, 63.15])。

 主要評価項目を達成した全試験集団の結果では、投与8週時におけるCMV血症の消失においてmaribavirが既存の抗ウイルス療法に対して優越性を示したが、今回のサブグループ解析結果は、その結果を裏付けている。
 具体的には、R/R CMV感染の移植患者においてCMV血症の消失が達成された割合は、既存の抗ウイルス療法群の23.9%(28/117)と比較して、maribavir投与群では55.7%(131/235)であった(調整群間差[95%信頼区間]:32.8%[22.8, 42.7]、 p<0.001)。
 maribavirを投与した移植後の患者では、既存の抗ウイルス療法を受けた患者で多くみられた治療に関連する毒性の発現率は低いことが示された。
 また、治療に関連する好中球減少の発現率は、バルガンシクロビル/ガンシクロビル投与群の25%(14/56)と比較して、maribavir投与群では1.7%(4/234)と低く、急性腎障害の発現率は、ホスカルネット投与群の19.1%(9/47)と比較して、maribavir投与群では1.7%(4/234)と低いことが示さた。
 試験治療下で発現した有害事象(TEAE)の発現率は、maribavir投与群で97.4%(228/234)、既存の抗ウイルス療法群で91.4%(106/116)でした1。maribavir投与群で最もよくみられたTEAEは、味覚異常(35.9%、84/234)、悪心(8.5%、20/234)および嘔吐(7.7%、18/234)であった。
 治験薬の投与中止に至った有害事象の発現率は、maribavir投与群で13.2%(31/234)、既存の抗ウイルス療法群で31.9%(37/116)であった。治療に関連した重篤な有害事象として2名の死亡が報告されている(各投与群に1名)。

 ◆武田薬品ヴァイスプレジデントでmaribavirのグローバルプログラムリーダーのオビ・ウメ氏(医学博士9のコメント
 CMV感染症はよくみられる感染症だが、現在も移植チームにとっては予測困難な脅威であり、固形臓器移植患者さんにおける推定発現率は16~56%である。
 今回の結果は、これらの困難に直面している患者さんのCMV感染に対するmaribavirの治療薬としての可能性に関する過去に発表したデータを強化するものである。

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