OAへの即効性、持続性、通院回数減少におけるジョイクルへの期待  小野薬品オンラインメディアセミナー

内尾氏

 小野薬品は26日、オンラインメディアセミナーを開催し、内尾祐司氏(島根大学医学部整形外科学教室教授)が「変形性関節症の現状と患者/医師調査結果からみた治療薬への期待」をテーマに講演した。
 内尾氏は、変形性関節症(OA)の病態、疫学などの基礎情報を紹介した後、患者・医師を対象とした調査で浮き彫りになった現在の治療薬への期待にも言及。「患者・医師ともに、即効性、持続性、通院回数の減少に対する期待が大きい」と報告した上で、「こうした要望を満たす薬剤としてヒアルロン酸にジクロフェナク(抗炎症薬)を化学結合した“ジョイクル”の有用性は高く、患者のQOL向上への寄与が期待できる」と訴求した。
 OAが最も多く惹起するのはヒザ関節で、同疾患の70%を占める。膝OAは、関節軟骨の変性や摩耗によって、疼痛や腫脹、可動域制限、関節変形などが現れ、階段の昇り降りやしゃがむ、正座をするなどの動作が困難になるなど日常生活に大きな支障をもたらす。
 膝には、歩行で90~120kg、ジャンプで180~240kgの荷重が掛かる。関節軟骨の変性や摩耗の進行が進めば、こうした運動の衝撃吸収ができなくなり、激しい痛みを伴ってQOLが大きく低下する。
 変形性膝関節症の有病率は、明らかに年齢とともに高くなる。膝OAの患者数は、約2530万人(男性約860万人、女性1670万人)に上り、女性に多い。
 OAの発症にはさまざまな因子が関与している。特に、加齢はOAの発症に最も影響を与える危険因子であり、関節保護組織の機能低下がOA発症の危険性をさらに高める。
 OAの治療では、第1選択が「患者指導(体重コントロールなど)、運動療法など」、第2選択が「薬物療法、装具療法、物理療法」、第3選択が「手術療法」である。運動療法が治療の基本となり、自宅での運動や感染対策を行った上で身体を動かすことが重要である。
OAは痛みを愁訴とし、そこからADL/QOLの低下を招き、最終的には健康寿命を阻害する。新型コロナ禍では、運動機能の低下に注意する必要がある。日本臨床整形外科学会のコロナ自粛後の身体変化に関するアンケートでは、全ての年齢層で運動機能の低下を感じており、ロコモ早期兆候の割合が年齢とともに増加している。
 一方、変形性関節症治療における患者/医師のニーズ調査では、治療における痛みに対する効果、持続性、即効性の重要性は、医師と患者で概ね一致している。
 仮に、患者と医師の望む持続性が得られれば、「治療とりくみのきっかけ」になり、「患者がやりたいことができる」ようになって、ひいては「治療満足度につながる」
 こうした中、5月19日に、小野薬品から生化学工業の独自の薬剤結合技術を用いてヒアルロン酸にジクロフェナク(抗炎症薬)を化学結合した関節機能改善剤「ジョイクル」が上市された。
 ジクロフェナクは、非ステロイド性消炎鎮痛薬の一つで、飲み薬や外用薬、坐薬の種類があり、炎症を鎮めたり痛みを和らげる作用を有する。
 また、ヒアルロン酸は関節内に含まれる成分で、関節の動きをスムーズにする潤滑油様の働きをしており、日本では30年以上前から変形性膝関節症に対してヒアルロン酸注射が行われている。
 関節注射のジョイクルは、関節局所における加水分解によりジクロフェナクが一定期間遊離する。炎症や痛みをやわらげるほか、関節液の働きを改善することで関節の動きを滑らかにし、関節機能の改善などの全般的な症状の改善が期待できる。関節腔内への4週間に1回の投与により、変形性関節症(膝関節、股関節)に対して有用性が認められている。
 ヒアルロン酸にジクロフェナク(抗炎症薬)を化学的に共有結合することで、徐々に徐々にジクノフェナクが放出され、ヒアルロン酸も長時間患部に留まることができるのが同剤の特徴だ。
 内尾氏は、「ジョイクルは、ジクロフェナクの即効的な鎮痛作用と、ヒアルロン酸の関節の潤滑作用や緩衝作用、ヒアルロン酸を作る作用を継続し、両剤の長所を発揮している」と強調。さらに、「単に両剤を添加しただけではなく 化学的に共有結合 させている点が、ジクロフェナクとヒアルロン酸の相乗効果が現れる要因となっている」と説明した。
 最後に、「即効性、持続性、通院回数の減少という要望を満たすジョイクルは、健康長寿や、“65歳を超えても働きたい”と願う人が多い人生100年時代に寄与できる薬剤であると考えられる」と訴えかけ、講演を締めくくった。

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