バソミューン社と共同開発の新型コロナ感染治療薬P1試験で好結果  アンジェス

FDAと協議の上、前期P2試験開始へ

 アンジェスは25日、バソミューン社と共同開発している新型コロナ感ウイルス染症治療薬「AV-001」について、P1試験で安全性と忍容性を確認し、良好な結果が得られたと発表した。P1試験では、AV-001の安全性と忍容性が確認され、1日1回の投与で開発できる薬物動態プロファイルが示された。
 AV-001は、トロントのサニーブルック病院で発見・デザインされたもので、アンジェスとバソミューン社の共同開発契約に基づき臨床試験が進められる。
 AV-001は、血管内皮細胞表面に最も多く発現する膜貫通型タンパク質であるTie2 受容体を標的とした新規治験薬である。同剤のTie2 アンジオポエチン経路を活性化させる作用で、血管機能を正常化させ、血管内皮バリアを回復させる。
 新型コロナ感染およびARDS(急性呼吸窮迫症候群)患者、特に高血圧、糖尿病および肥満などの血管合併症を既往している患者の病態において、血管機能障害が認められている。
 こうしたエビデンスにより、AV-001は、新型コロナ感染症に対する画期的な治療薬(ファースト・イン・クラス)として注目されている。
 今回実施したP1試験は、20 歳から63 歳までの健康成人48名を対象に、AV-001の単回投与および連続回投与それぞれの安全性、忍容性、薬物動態を評価した。
 同試験の治験責任医師である Leela Vrishabhendra氏は、「AV-001の単回投与および連続投与で、安全かつ良好な忍容性を示した。さらに、1日1回の投与で開発を進め得ることが薬物動態解析結果から示された」と試験結果の成果を説明する。
 同試験では、AV-001の単回および連続投与において、56μg/kg/日までを7日間連続で投与した結果、安全性と忍容性が確認された。重篤な有害事象や臨床的に重要な臨床検査値 の異常、臨床的に重要な心電図の異常は認められなかった。薬物動態解析結果からも、AV-001の安全域の広さが確認された。
 アンジェスとVasomune 社は、これらのデータをFDAに提出し、次のステップである重度の 新型コロナ感染症患者での有効性を評価する前期P2相試験について協議する予定である。
 なお、前期P2相試験は、米国に加えてカナダの施設も含めて実施することを検討している。
 AV-001 については、本年3月17 日付で、バソミューン社がNational Research Council(NRC)を通じてカナダ政府より助成金を受けた。また、昨年8月にも、米国防総省から280万ドルの医療研究プログラム(PRMRP)助成金を獲得。新型コロナ感染症治療薬として、米国、カナダ政府の力強い支援で、この後に続く臨床試験を加速させる。
 一方、最近の知見によれば、SARS-CoV-2ウイルスが肺内皮細胞に感染して微小血管透過性亢進を引き起こし、血管バリアを変化させ、凝固状態を促進し、血管内皮炎症を誘発。さらに、炎症性細胞の遊走を媒介することで、新型コロナ感染患者における呼吸窮迫とARDS を引き起こし、次第に増悪させるメカニズムが示唆されている。
 致死性RNAウイルス感染動物モデルを用いたインフルエンザ/ARDSの前臨床試験において、AV-001は内皮細胞のタイトジャンクションを狭め、血管バリア機能を回復させ、血管透過性亢進をブロックすることで、血管機能を正常化させる。
 重要なことに、AV-001 単剤療法では、未治療の対照群と比較して生存期間と肺機能が有意に改善されるが、抗ウイルス療法との併用により有効性はさらに増強されるという利点が示されている。
 AV-001は、中等度から重度の新型コロナ感染症およびARDSの治療薬として開発されている。

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