東京医科大学公衆衛生学分野の町田征己助教らの研究チームは4日、新型コロナワクチン予防接種に対する心理的要因と接種希望の関連について調査結果を公表した。同調査は、日本全国の20-79歳の男女3000人を対象に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンに関する考えについてインターネット調査を本年1月14日に実施したもの。
その結果、新型コロナワクチン予防接種の普及にはワクチンは効果があるという認識や、自分が予防接種を受けることで他者も守るという思いが重要であることが判明した。また、調査対象の男女3000人のうち接種を希望する者は本年1月時点で62.1%であった。なお、同研究成果は、3月3日に国際医学雑誌Vaccinesオンライン版で発表された。
新型コロナ感染症の世界的な流行の打開策として期待されているワクチン接種が、国内でも医療従事者を中心に開始されている。今後、一般市民の予防接種も段階的に開始となる予定であるが、その際に問題となる可能性として「ワクチン忌避」が考えられる。
ワクチン忌避とは、「予防接種が受けられるにも関わらず、受けることを躊躇する、あるいは拒否する」ことで、予防接種の摂取率の向上が世界的な課題となっている。
町田氏らの研究は、新型コロナ予防ワクチンに関する市民のワクチン忌避とそれに影響する要因を明らかにすることを目的に行われた。
調査は、本年1月14日に日本全国の20歳から79歳の市民3000人を対象にCOVID-19ワクチンに関する考えについてインターネット調査したもの。対象者は、性別、年齢、居住地域の構成割合が人口推計と一致するように抽出された。
同調査では、回答者のうち62.1%が、ワクチン接種が可能になった際に予防接種を「とても受けたいと思う」あるいは「やや受けたいと思う」と回答した。
多変量解析の結果では、女性や若年者(20-49歳の者)、低所得者では接種を希望する人が少ないことが明らかになった。
また、心理的要因としては、「自分が新型コロナに罹る可能性が高いと思っている」、「新型コロナ感染が深刻な病気だと思っている」、「ワクチンは効果があると思っている」、「自分が予防接種を受けることで他者も守る」という思いがが、接種希望と関連していた。
特に、「ワクチンは効果がある」との思いと、「自分が予防接種を受けることで他者も守る」との思いが、他の要因よりも強い関連性があり、予防接種を受けるかどうか判断する上で重要な要素になっていることが分かった。
性別、年齢、収入によって接種希望者の割合が異なる背景には、今回の研究では明らかにできなかった様々な心理的要因や社会的背景があると考えられるが、これらの人々に積極的な普及啓発を行いワクチン接種希望者を増やすことは、国民全体のワクチン接種率を高める上で重要と考えらる。
また、普及啓発を行う上では、「ワクチンの効果と、自分が予防接種を受けることで他者を守れる」との啓発が特に重要と考えられる。