ストレスチェックからハラスメント被害者の4大特徴を分析  ドクタートラスト

 ドクタートラスト(東京都)のストレスチェック研究所は10日、ストレスチェックから判るハラスメント被害者の4大特徴を6万6000人超のデータから導出し公表した。2019年度にストレスチェックサービスを利用した受検者のうち、「職場でハラスメントを受けていると感じる」と回答した人の結果を分析し、特徴を導き出したもの。
 同研究所では、ストレスチェックサービスを利用した累計受検者100万人のデータを活用し、さまざまな分析を行っている。今回の分析の分析では、ストレスチェックで「職場でハラスメントを受けていると感じる」と回答した人たちは、次の4大特徴がみられた。
①「自分の職場は、互いに理解し認め合っていない」と感じている
②「内心腹立たしい」と感じ、イライラ感が強い傾向にある
③「上司は誠実な態度で対応してくれない」と感じている 
④「職場の雰囲気は友好的ではない」と感じている
 これらの特徴から、ハラスメントの行為者、被害者ともに互いの非を追求しあう関係にあるため、この問題は客観性を持つことが望ましい。そのためにも相談窓口や社内規定を整備し、組織として対応を進める重要性が浮き彫りになった。

 ◆調査概要と調査結果の詳細は次の通り。

1. 始めに~調査対象の概要~
 ストレスチェック制度は、「従業員のメンタル不調の予防やその気付きを促す」、また、「ストレスが高い人の状況把握やケアを通して職場環境改善に取り組む」ことを目的として制定された。2015年12月以降、従業員数50名以上の事業場で年1回の実施が義務づけられている。
 ドクタートラストが提供するストレスチェックサービスは、設問数80項目と57項目の2種類を用意しており、利用法人がどれを使用するか選択している。設問数80項目のストレスチェックは、職場環境改善の参考とすべく作られたものだが、今回の調査では、2019年度にドクタートラストで80項目のストレスチェックを受検した6万6457人の結果を分析した。同分析では、「職場でハラスメントを受けていると感じる」と回答した人たちには、4つの大きな傾向がみられた。
 
2. 「職場でハラスメントを受けていると感じる」と回答した人たちには、4つの大きな傾向がみられる
 ストレスチェックは、各設問に対して「そうだ」、「まあそうだ」、「ちがう」、「ややちがう」の4択形式で回答。ストレスチェックの設問「職場でいじめにあっている(セクハラ、パワハラを含む)」で「そうだ」と回答した人と「ちがう」と回答した人について、各問の回答傾向を比較した。
 その結果、「職場でいじめにあっている(セクハラ、パワハラを含む)」で「そうだ」と回答した人について、すべての設問での回答結果が不良(「そうだ」、「まあそうだ」と「ややちがう」、「ちがう」のうち、よくない回答)であると分かった。

図1


 特に大きな差異がみられたのは次の4項目である。つまり、ハラスメントを受けている人たちは、これらの点で特に困難を感じている。(図1)
① 職場の一体感 (設問「私たちの職場では、お互いに理解し認め合っている」より)

② イライラ感 (設問「内心腹立たしい」より)

③ 上司の誠実な態度 (設問「上司は誠実な態度で対応してくれる」より)

④ 職場の雰囲気 (設問「私の職場の雰囲気は友好的である」より)

3. ハラスメントを受けていると感じている人の所属部署は、一体感に欠けている可能性が高い

図2

 ストレスチェックの設問「私たちの職場では、お互いに理解し認めあっている」は、職場の一体感を確認するために設けられている。この項目において不良回答が多いことから、ハラスメントを受けていると感じている人が所属する部署では、話を最後まで聞く姿勢に欠けていたり、互いの立場や頑張りなどを認め合うことが稀であったりする様子がうかがえる。相互理解の不足で、従業員は一体感を得にくいと考えられる。(図2)

4. ハラスメントを受けていると感じている人は、怒りっぽい可能性が高い

図3

 憂鬱や不安といったストレス状況を確認する設問のなかで「内心腹立たしい」に対する回答が最も不良であることが分かった。このことから、ハラスメントを受けていると感じている人は、気分が落ち込んだり不安になったりする以上に、外からは見えにくい怒りを内に秘めていると考えられる。(図3)

5. ハラスメントを受けていると感じる人は、差別的な対応に敏感である可能性が高い

図4

 ハラスメントを受けていると感じている人は設問「上司は誠実な態度で対応してくれない」の回答結果が不良であったため、上司の態度が公正でないと考えていると判る。つまり、上司の自分への対応と周囲のそれとを比較し、温度差を感じているのであろう。些細な対応の差にも気づき、理不尽な想いを抱えている様子がうかがえる。(図4)

6. ハラスメントを受けていると感じている人の所属部署は、親しみの持てない雰囲気である可能性が高い

図5

 また、ハラスメントを受けていると感じている人は設問「職場の雰囲気が友好的ではない」の回答結果が不良であったことから、職場の雰囲気に疑問を持っている。従業員同士の意見交換が消極的であるなどして、親しみを持ちにくい雰囲気であると考えられる(図5)

7. ハラスメント問題は、部署に問題があるのか? 本人の問題なのか?

 本調査の結果から、ハラスメント問題に取り組む際には次の視点が重要であると判明した。ハラスメントは職場環境を起因として発生している可能性が考えられる。
 一方で、ハラスメント被害者本人も常に怒りを秘めているため、冷静な判断に欠ける可能性も見逃せない。ハラスメントの行為者、被害者ともに互いの非を追求し合う関係にあるため、この問題は客観性を持つことが望ましく、そのためにも相談窓口や社内規定を整備し、組織として対応を進める姿勢が欠かせない。

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