花王ビューティリサーチ&クリエーションセンターとメイクアップ研究所は、日本人女性の「平均フェースプロポーション」の確認と、印象の違いに影響を与える顔の特徴を明らかにした。日本人女性の顔を調査解析し、目や口などのパーツの配置および形状から分析したもの。
今後、同成果を、個性や美の多様性が重視される現代におけるメイクアップ提案の基盤情報として活用していく。なお、今回の研究成果は、第25回日本顔学会大会(2020年10月3~4日・オンライン開催)でも発表されている。
昨今、「自分の個性を生かしたメイクをしたい」という声が多く聞かれる。花王グループのカネボウ化粧品は、1982年に、日本人女性の顔を調査し、目や鼻、口などのパーツの大きさや配置の美しいバランスを定め、パーツの配置によって印象が変化することを報告している(図1)。
その後40年近い年月がたち、現在は、当時にもまして、個性や美の多様性が重視されるようになった。花王では、それぞれの顔の個性を見極め、生かすことができるメイクアップ提案をめざし、その具体的な指針を得るため、改めて日本人女性の顔に関する調査を行なった。
日本人女性の「平均顔」を数値とビジュアルで確認
今回の調査では、20~30代の日本人女性104名の顔を撮影し、眉の角度、目の角度、目の面積、鼻の長さ、顔の横幅、顔の縦横比などの32項目を詳細に測定し、それぞれの平均値を算出した。さらに、104名の顔を合成し、「平均顔」画像を作成した(図2)。
その結果、「平均顔」は、「額~眉頭、眉頭~鼻下、鼻下~あご先のそれぞれが、顔の縦の長さを3等分した比率、目の横幅は顔の横幅の5分の1程度」であることを確認した。
また、「目と目の間隔は、片目の横幅の約1.2倍」であるなど、重要な数値が明らかになった。
顔の印象を特徴づける要素が明らかに
次に、77枚の顔写真を20~30代の男女400名に提示し、8つの印象(「かわいい」「やさしい」「上品」「知的」「大人っぽい」「美人」「印象が良い」「親しみがもてる」)の程度についてVAS評価を行なった。さらに、8つの印象について、その印象が強いと評価された上位20名でグループを作り、その顔を合成した「印象顔」画像を作成した(図3)。
8つの印象それぞれについて、上位20名の顔の32項目での平均値と「平均顔」の数値を比較するとともに、各印象と32項目の計測値の相関分析を行ない、印象に関与していると考えられる項目を探索した。
その結果、印象によって「平均顔」との有意差のある項目が異なることや、印象ごとに関連性の高い項目が違うことが判明。たとえば「かわいい」の評価が高い顔は額が広く目が縦に大きいなど、顔の印象を特徴づける要素が明らかになった。
また、「平均顔」は、各項目の測定値においてほぼ中央値であることから、メイクアップ提案や個性を見いだすヒントとなる顔であることも確認。このパーツの配置や形状のバランスを「平均フェースプロポーション」とするようにした。
加えて日本人女性の顔は、「平均顔」を中心に、目~鼻下の長さが「短いグループ」と「長いグループ」に大別され、その中もそれぞれ特徴の似通った2グループに分けられることが分かった。
それぞれの「印象顔」の特徴は、目や眉の角度や大きさなどに表れており、パーツのバランスや配置だけでなく、目もとが顔全体の印象に影響することも確認された(図3)。目もとは、メイクアップで容易に変化させることが可能なため、顔の印象を変える際にメイクアップが有効な手段であることが示されたと言える。
今回の調査では、日本人女性においては、顔のパーツの配置や形状の平均となる「平均フェースプロポーション」をもとにすると、それぞれの顔の個性が見いだしやすいことがあらためてわかった。
また、目や眉の角度や大きさをはじめとする項目について、目安となる数値を明らかにできたことで、顔の“印象”を特徴づける要素の抽出が可能となった。さらに、「印象顔」の作成により、その印象の顔がもつ個性をわかりやすく示すことができた。
これらの成果により、日本人女性の顔の個性をより具体的に理解し、多様性を尊重したメイクアップ提案に応用するための知見が得られたと考えられる。
花王では、今回得られた知見を、化粧品ブランドの基礎情報として活用することに加え、日本での美容部員の教育に応用し、メイクアップ技術や提案力の向上を図る予定だ。商品開発や個性を見極めるツールの開発、“個性美”を演出する具体的なメイクアップ提案、デジタルを活用したメイクアップ提案などにもつなげ、顧客の望む美の実現に貢献していく。