アストラゼネカは9日、アカラブルチニブについて、欧州連合(EU)で慢性リンパ性白血病(CLL)の成人患者の治療薬として承認されたと発表した。アカラブルチニブは、次世代の選択的ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬で、欧米においてCLLは成人白血病の中で最も患者数が多いと言われている。
今回の欧州委員会による承認は、未治療のCLL患者を対象とした ELEVATE-TN、再発または難治性CLL患者さんを対象とした ASCEND の 2 つのP3相試験の良好な結果に基づくもの。2020年7 月の欧州医薬品庁(EMA)の医薬品評価委員会(CHMP)による承認勧告に従って承認された。
P3試験 ELEVATE-TNでは、前治療歴のない CLL 患者を対象としたアカラブルチニブとオビヌツズマブの併用療法、またはアカラブルチニブの単剤療法が、標準化学免疫療法である chlorambucil とオビヌツズマブの併用療法との比較で、病勢進行または死亡リスクをそれぞれ90%および80%低下させた。
P3相 ASCEND 試験では、アカラブルチニブを服用した再発または難治性 CLL 患者の88%が12カ月後も生存または病勢進行が認められなかったのに対し、リツキシマブとidelalisibまたはベンダムスチンの併用療法を受けた患者では68%であった。2つの試験の中間解析データはそれぞれ、The Lancet 誌および Journal of Clinical Oncology 誌で発表されている。
P3相 ASCEND 試験の治験担当医師で、Vita-Salute San Raffaele大学および CLLのStrategic Research Program ディレクターのPaolo Ghia 氏は、「CLLの治療における最大の課題の1 つは、長期にわたって症状をコントロールできる高い忍容性のある治療選択肢を見つけることである。合併症を有する高齢患者に大きく影響を与えるために大きな課題となっている」と説明。
その上で、「アカラブルチニブは2つのP3相試験において、現在の標準治療と比較して有意な改善を示しており、今回の承認は、欧州の CLL 患者にとって大きな進展になる」と強調している。
アカラブルチニブは、米国でCLLおよび小リンパ球性リンパ腫の治療薬として、その他複数の国々ではCLLの治療薬として承認されている。加えて、米国をはじめとする複数の国々で、少なくとも1回の前治療歴のあるマントル細胞リンパ腫(MCL)の成人患者の治療薬として承認されている。同剤は、現在、欧州においてMCLの治療薬としては承認されていない。
広範な臨床開発プログラムの一環として、アカラブルチニブは、CLL、MCL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、原発性マクログロブリン血症(WM)、濾胞性リンパ腫(FL)、およびその他の血液悪性腫瘍を含むB細胞性悪性腫瘍の治療薬として、20 を超える臨床試験において検証されている。なお、アカラブルチニブは、本邦では未承認である。