ケンブリッジ大学・アストラゼネカと研究コンソーシアム設立  塩野義製薬

 塩野義製薬は16日、英国ケンブリッジ大学およびアストラゼネカ社と共同で、医薬品等の化学合成における自動化とデジタル化に向けた研究コンソーシアム(Innovation Centre in Digital Molecular Technologies、iDMT)を新設したと発表した。同コンソーシアムは、欧州地域開発基金からの拠出を受ける。
 医薬品の研究開発において化学合成は、設計した化合物を期待される期間内に作り、種々の有効性と安全性を評価する試験に供給する上で必須の技術だ。その一方で、化学合成は研究者の手による多段階の工程を必要とし、また経験に頼るところも大きく、必ずしも望む化合物が目標とする期間内に得られるわけではない。
 iDMTは、欧州地域開発基金から一部の資金拠出を受けて、英国ケンブリッジ大学と参画企業が共同で新たに発足させる研究コンソーシアムである。ケンブリッジ大学の化学科、物理学科、化学工学・生命工学科の研究者が専門知識を持ち寄り、塩野義製薬、アストラゼネカ社との共同研究を通じて、ハイスループット合成、分析技術、ケモインフォマティクス、機械学習、ロボット工学、反応工学を統合することで、化学合成における自動化、デジタル化に向けた研究開発を推進する。
 得られた研究成果は、参画企業内の研究活動に還元されるほか、英国ケンブリッジ地域の化学系中小企業との商業化を目指した共同研究を通じて、化学産業の革新への寄与が期待されている。
 同コンソーシアムでは、化学合成の加速に向けて、
「人工知能と自動化による化学合成の加速」、「化学実験のロボット化」、「大規模生産へ向けた工程検討を加速する人工知能アルゴリズムとツール開発」の3つの重点領域について、アカデミアと企業研究者のコラボレーションを推進する。
 これらを実現することで、必要な化合物をより迅速に供給するとともに、研究者がアイデアの創出により集中できる時間の確保により、医薬品の研究開発のさらなる加速が期待される。
 同コンソーシアム代表でケンブリッジ大学化学工学・生命工学科のAlexei Lapkin教授は、「大学内の複数の研究科にまたがる専門家が最新鋭の研究施設において知識を持ち寄り、製薬分野におけるリーディングカンパニーである塩野義製薬、アストラゼネカ社のサポートを受けることで、新分野であるデジタル化学技術の発展が可能になる」とコメントしている。

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