ヘルスケア・イノベーションハブ「i2.JP」を構築 アストラゼネカ

 アストラゼネカは11日、ヘルスケア分野におけるオープンイノベーション活動を積極推進する新たなイニシアティブ「i2.JP(アイツー・ドット・ジェイピー)」を立ち上げたと発表した。
 i2.JPの立ち上げは、国内外の企業・団体や他のオープンイノベーション活動との連携により、QOLの向上に向けた包括的なヘルスケアソリューション提供の取り組みのさらなる加速を目的としたもの。
 アストラゼネカのグローバルネットワークを活用して、4D(診断Diagnosis、機器Device、デジタルDigital、医薬品Drug)+E(エクスペリエンスデザインExperience design)を推進し、 パートナー間にシナジーをもたらす仕組みを構築していく。

 「i2」の二つの「i」は、「innovation」と「infusion」を表しており、「innovation」は「革新」、「infusion」は「鼓舞」、「注入」といった意味を持つ。
 アストラゼネカは「i2.JP」に参画する企業やアカデミア、政府、団体とのパートナーシップを通じて、「患者をサポートするソリューションの提供」や、「医療従事者の抱える課題の解決」、「新たなヘルスケア技術およびソリューションの育成」などを実施することで、次世代ヘルスケアへの貢献を目指す。
 第5世代移動通信システム(5G)や人工知能(AI)などの技術が進化し、またコロナ禍で「新たな日常」への対応が求められるなど社会が急速に変化する中、ヘルスケア分野においてもイノベーションの創出が不可欠である。アストラゼネカは、イノベーション志向の製薬企業として、発症予防から予後管理までを含む患者の治療体験全体、ひいてはQOLの向上に向けた包括的なヘルスケアソリューションを提供すべく、医薬品の開発・供給のみならず、医療機器との連携やデジタル技術の活用にも積極的に取り組んできた。
 一社で成し遂げられることは当然ながら限られているため、アストラゼネカの肺がん治療薬による治療を受けている患者の服用状況や病状の可視化・自己管理・医師とのコミュニケーション等を支援するスマートフォンアプリをWelby(本社東京都)と共同開発するなど、これまでもさまざまな事業分野のパートナーとの協業を通じて、患者のアンメットニーズに応える取り組みを行ってきた。「i2.JP」もその一環として開設されたもので、国内外の企業・団体や他のオープンイノベーション活動との連携により、これらの取り組みをさらに加速させる。
 アストラゼネカはグローバルでは、すでにスウェーデンをはじめとする諸外国においてオープンイノベーションを主導する経験と実績を有している。
 その一例として、同社のヨーテボリ(スウェーデン)のR&D拠点の中のオフィスと実験室スペースの一部を、インキュベーション施設「BioVentureHub(バイオベンチャーハブ)」としてバイオテクノロジー企業や研究団体に提供している。「BioVentureHub」は、参画するバイオテック系のスタートアップ企業にとってアストラゼネカの科学的な専門知識や施設を活用する機会であると同時に、コラボレーション先との出会いの場にもなっている。
 2014年に始まったこの取り組みには、現在では30以上のスタートアップ企業が参画している。i2.JPは、こういったオープンイノベーションの機会を日本においても創出し、アストラゼネカのグローバルネットワークを活用して国外の企業や団体との間に橋を架ける役割も担う。
 アストラゼネカは「i2.JP」を通じて国内外のスタートアップ、産業界、医療セクターを含む官民パートナーシップを促進し、グローバルな才能とリソースを集結したオープンイノベーションを通じて次世代医療に貢献していく。
 アストラゼネカは、「i2.JP」創設にあたり同日オープンした公式ウェブサイト( https://www.i2jp.net/ )を通じて、同イニシアティブに加わる新たなパートナーを募るとともに、今後の活動について継続的なアップデートを行っていく。
 立ち上げ時点でのi2.JPパートナー企業、団体は、次の通り。
・アストラゼネカ
・大阪イノベーションハブ
・Welby
・木幡計器製作所
・オムロン ヘルスケア
・MICIN
・スギ薬局

ヴォックスストラム 氏


 同日、開催された「アストラゼネカ ヘルスケア・イノベーションハブ構想を紹介するオンライン メディアセミナー」の中で、アストラゼネカのステファン・ヴォックスストラム社長が、日本のヘルスケア・イノベーション加速のための重要ポイントについて言及。
 「アストラゼネカのグローバルネットワークにアクセスすることで、日本のエコシステム強化に不可欠なグローバル視点を培う」、「スタートアップ、アカデミア、産業界、医療セクターを含む官民パートナーシップの戦略的ネットワークを構築し、グローバルな才能とリソースを活用する」の2点を訴求した。
 i2.JPについても、「あくまでも医療を変革するためのプラットフォームであり、アストラゼネカとコ・プロモーションするものではない」と説明した。
 また、パネルディスカッション登壇者の一人である宮田裕章氏(慶応義塾大学医学部教授)は、「今後は、検診や病院に来てからではなく、スマートフォンに入っている健常人のデータに寄り添って健康そのものを考える視点から、新たなヘルスケア技術やソリューションを産学連携で育成する必要がある」と強調した。
 さらに「日本の遠隔教育は、OECD37カ国の中で37番目であるので、今までそのバリューを示せなかった」と指摘し、「政府は、デジタル庁として、官のシステムの一元化だけではなく、どういう社会を作り上げていくのかのデザインを重要視している」と紹介。その上で、「医療においても、データと患者の体験、人々の考えを連動しながら、どういう豊かさを想像していくのかが重要となる」との考えを示した。
    

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