小野薬品の相良暁社長は29日、2020年度中間決算説明会で会見し、オプジーボについて、「現在、食道がん、胃がん、腎細胞がんでの使用が堅調に進んでいる。下期には、非小細胞肺がんでの一次治療の効能追加を予定している」と説明。その上で、「今年度売上高は980億円を見込んでいるが、当面は右肩上がりに進んでいく」との見通しを示した。
また、オプジーボの効能追加ととに2020年度下期の好材料として「ジョイクル(変形性関節症)」、「エドルミズ(がん悪液質)」の承認・上市を指摘。その一方で、「新製品が出るものの、新型コロナの影響でプロモーション活動は十分にできない」とした上で、「少しずつ動きが取れる状況になってきているので、小規模な講演会の開催やWebの活用、さらにはWebの限界を見定めながらプロモーション活動の模索を進めて行く」方針を強調した。
基礎論文で新型コロナウイルス感染症に効果があると報告された「フオイパン」(慢性膵炎・術後逆流性食道炎治療薬)のP3相試験は、「年内にスタートする」予定だ。
がんの中で最も患者数が多い非小細胞肺がんにおいて、オプジーボは二次治療以降での使用に限られるのに対して、競合品のキイトルーダ(メルク)は、3年前から一次治療の適応を取得している。そのため、キイトルーダとオプジーボの肺がんの国内シェアは、8対2、もしくは9対1にまで広がった。
今年度下期のオプジーボの肺がん一次治療承認取得(予定)により、「ハンデキャップが無くなり、ようやく肺がんで追いつける」と断言する相良氏。さらに、「東アジアに多い消化器がんでは先手を打って、胃がん、食道がんでの開発・上市を進めている」と説明し、「今後、食道がんや胃がんの一次治療、術前術後のアジュバント療法の承認を取得して、オプジーボの最大化を図る」方針を強調した。
胃がんの一次治療は申請中。術前術後のアジュバント療法は、尿路上皮がんのアジュバントおよび食道がんのアジュバントは申請準備中、胃がんのアジュバントは今年度中の申請を予定している。 オプジーボ単独よりも併用で効果が上がる組み合わせについても「探索しながら臨床試験を進めて行く」考えを改めて訴求した。
オプジーボの生産体制にも言及し、「山口工場は、現在、ライン1レーン、約30名で操業を開始している。時期は断言できないが、レーンは2つになり、3つになって、フジヤマ工場と2本柱になる」計画を明らかにした。気になるオプジーボの薬価再算定については、「現行のルールであれば、次のハードルは年間売上高2000億円程度であるとみている」と述べるに留めた。
8月に、オンジェンティス(パーキンソン病)の上市、10月に韓国SKBP 社からCenobamate(抗てんかん薬)の導入契約を決めたCNS部門は、「小野薬品の研究分野の一つの柱なので、社内からもさらなる開発品がでれば良い」とした。
18年3月時の1671億円の保有株を3年かけて30%削減する「政策保有株」については、「2年間経過して21%削減した。残りの1年間で9%削減するところまで来ており、銘柄数も111銘柄から79銘柄に減少した。予定通りに進捗している」と報告した。