大日本住友製薬の野村博社長は28日、2020年度中間決算説明会で会見し、ロイバント社との戦略的提携により昨年12月に設立した米国子会社スミトバント社の事業進捗状況について言及。「今のところマネージメントもうまく行っており、ブロックバスター候補の2製品(レルゴリクス、ビベグロン)も米国申請中で、投資効果が出ている。順調な事業進捗状況に手応えを感じている」と強調した。
また、2020年度通期の北米でのラツーダの売上高上方修についても「新型コロナウイルスの影響で高失業率が継続する想定で7月に下方修正した」とこれまでの経緯を説明。その上で、「失業率が7月時点予想から改善するとともに、新型コロナによる受診控えの影響で90日処方が増えて薬局在庫増加の売上増が加わり上方修正した」と説明した。
新型コロナの影響で遅れているナパブカシンの結腸直腸がんP3試験の結果判明時期についても、「10月21日にデータの74%が集められた。100%集まるまでもう少し時間が掛かるが、何とか年明け、遅くとも今年度内に答えを得たい」とコメントした。
ロイバント社との戦略的提携で獲得したマイオバント社のレルゴリクス(前立腺がん、子宮筋腫)、ユーロバント社のビベグロン(過活動膀胱)は、いずれも米国で承認申請中で、今年度中の発売を予定しており、ブロックバスター候補としての期待が高い。
現在、レルゴリクス、ビベグロンともに当該会社で営業基盤構築を推進し、承認に向けてのsales reps採用を予定している。sales repsは、前立腺がん約100名(泌尿器科医、腫科医をカバー)、子宮筋腫約200名(産婦人科医をカバー)、過活動膀胱約160名(泌尿器科医、長期療養施設、処方が多いプライマリ・ケア医をカバー)。
さらに、両剤ともに米国子会社でラツーダの販売実績等を誇るサノビオン社と流通契約を締結。ビベグロンについては、サノビオン社とユーロバント社がコ・プロモーション契約を締結しており、サノビオン社のマルチスペシャリティチーム約80名が米国全土のプライマリ・ケア医をカバーする。
また、サノビオン社が、9月26日より米国で発売を開始したキンモビは、「パーキンソン病に伴うオフ症状の治療の中で優先的な地位の確立を目指す」
2020年度は、モーニングオフ症状に重点を置き、2021年度は全てのオフ症状を対象に、既存sales reps約80名が、対面とオンラインでプロモーション活動を展開する。
期初の北米でのラツーダの2020年度売上高予想は、1942億円であった。その後、新型コロナの影響で、失業者増による「民間保険からメディケイド等への移行」、「無保険者の増加」を想定し、7月に1879億円に下方修正された。
だが、失業率は7月時点予想から改善して需要増となり、新型コロナによる受診控えの影響で90日処方増に伴う薬局在庫の増加も加わって、今回1990億円に上方修正された。
一方、結腸直腸がんP3試験結果判明時期の遅れに伴うナパブカシンの上市目標は、米国は2021年度から2022年度に、日本は2022年度から2023年度に、それぞれ1年間順延された。
ラツーダの111億円の上方修正とナパブカシンの開発スケジュール見直しによる費用減が主要因となり、2020年度の通期業績予想は、売上収益5060億円(7月30日予想より110億円増)、コア営業利益470億円(同140億円増)、営業利益580億円(同340億円増)、親会社の所有者に帰属する当期利益420億円(同330億円増)に上方修正された。
国内事業では、本年10月よりCNS営業本部を新設。「小田切斉営業本部長がCNS営業部長を兼ねる本部直轄のフラットな組織」(野村氏)を構築した。 これにより、情報共有および指示伝達の効率化を図り、統一した戦略を迅速に展開して、ラツーダ(本年6月発売)、ロナセンテープ(昨年6月発売)の早期最大化を図る。また、支店長の管轄からCNS領域が外れることで、糖尿病領域への支店マネジメントを強化し、イメグリミン上市に向け糖尿病領域の強化を図る。