塩野義製薬は30日、東京大学発の創薬ベンチャーHanaVaxとHanaVax社が開発中の新規経鼻肺炎球菌ワクチンに関するライセンス契約を締結したと発表した。
この契約締結により塩野義製薬は、同ワクチンの全世界における独占的研究・開発・製造・流通ならびに販売権を取得し、HanaVax社に対して、契約一時金、開発の進展に応じたマイルストン、および製品上市後の販売額に応じたロイヤリティーを支払う。
新規経鼻肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌感染症の予防を目的とする経鼻投与型のワクチンである。肺炎は、日本における死亡要因の第5位であり、肺炎球菌はその原因となる病原微生物の中で最も重要な細菌の一つだ。
また、肺炎球菌は、特に高齢者や小児等に対して、重篤な肺炎のほか、髄膜炎、敗血症などの侵襲性肺炎球菌感染症を引き起こすことが知られている。肺炎球菌には90種を超える血清型が報告されているが、既存ワクチンの効果は一部の血清型のみに限られるため、より広範な血清型に対して有効なワクチンの開発が求められる。
同ワクチンは、広範な抗原として期待されるPspA抗原、およびHavaVax社の独自技術であるカチオン化ナノゲルデリバリーシステムを用いており、鼻腔内に投与することで、従来の注射による痛みがなく、感染部位である呼吸器粘膜ならびに全身に対して効果的に免疫を誘導することができる。これまでに経鼻投与による非臨床試験において、呼吸器粘膜および全身への免疫誘導、および感染予防効果が確認されている。
塩野義製薬とHanaVax社は、感染症領域における塩野義製薬の強みと、粘膜免疫学のパイオニアであるHanaVax社の強みを融合し、同ワクチンの研究開発を加速していく。