武田薬品は24日、連結子会社の武田コンシューマーヘルスケア(TCHC社)の全株式を米ファンドのBlackstoneに譲渡すると発表した。The Blackstone Groupとその関連会社が運用するプライベート・エクイティ・ファンドが管理するOscar A-Co (譲受会社)に譲渡するもので、同日、譲受会社との間で株式譲渡契約を締結した。同株式譲渡に伴い、TCHC社は武田薬品連結子会社から除外される。株式譲渡価額は、企業価値2420億円に、TCHC社及びTHP社の純有利子負債や運転資本等に係る調整を行い、実際の譲渡価額を確定する。
TCHC社は、日本初のビタミンB1製剤である「アリナミン」や総合感冒薬である「ベンザ」をはじめとした製品を通じて人々の健康に貢献し、特に同社のトップ製品でもあるアリナミンは、顧客の信頼を獲得して強力なブランドを築き、同社の歴史においても重要な役割を果たしてきた。
武田薬品は、日本国内を中心とするコンシューマーヘルスケア事業のさらなる成長を目指し、同事業を分社化させてTCHC社を設立し、2017年4月より同社の事業をスタートさせ。だが、コンシューマーヘルスケア市場における競争が近年ますます激化し、顧客のニーズも一層多様化する中、TCHC社は、戦略を一段と強化し、さらに機動的なビジネスモデルを構築することで市場への即応性を高めていくことが必要となってきている。
武田薬品は、現在、消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー(がん)、ニューロサイエンス(神 経精神疾患)の主要な5つのビジネスエリアにフォーカスするとともに、サイエンスにより生活を一変させる革新的な医薬品の創出に注力する戦略を取っている。
こうした中、TCHC社の高い能力や専門性を最大化し、製品ブランドをさらに発展させるあらゆる成長戦略の選択肢を慎重に検討。その結果、世界有数の投資会社でヘルスケア分野への豊富な投資実績を有する Blackstoneが設立した譲受会社へのTCHC社の全株式譲渡を決定した。
Blackstoneの積極的かつ戦略的な投資のもと、独立した企業グループとして迅速かつ柔軟な意思決定により、TCHC社が市場ニーズに即応し、製品ブランドのより一層の成長、さらなる発展が期待されている。Blackstoneは、「現在のTCHC社の経営陣とともに事業を成長させ、従業員の雇用を継続する」意向である。
◆今回のコンシューマーヘルスケア全株式譲渡に関するクリストフ・ウェバー代表取締役社長CEOのコメントは次の通り。
日本で「タケダ」といえば、ほとんどの方がTCHC社のトップブランドであるアリナミンを思い浮かべるほど、TCHC社は顧客からの信頼を得て強いブランドを築いている。
その歴史を振り返ると、タケダは1954年に日本で初めてビタミンB1誘導体製剤としてアリナミンの販売を開始し、それまで日本の国民病とされていた脚気の克服や、第二次世界大戦後の食料難からくる人々の栄養不足の改善に大きく寄与した。それから70年間近く、アリナミンはドリンク剤の開発も経て、時代と共に多様化する人々の疲れを癒すべく、日本およびアジア市場において成長を続け、タケダの歴史と共に歩みを進めてきた。
このように長年にわたり培ってきた、顧客からの信頼を得て強いブランドを築いている日本のコンシューマーヘルスケア事業の譲渡は、TCHC社の従業員にとってはもちろん、当社の日本の従業員やこれまでのタケダを作り上げてきた先人にとっても非常に辛いことであり、私自身も非常に困難な決断である。
だが、日本の人口減少や健康食品との競合などにより、日本のコンシューマーヘルスケア市場における競争は近年ますます激しくなっている。そのような中、コンシューマーヘルスケアビジネスを展開するTCHC社には、市場への即応性を高め、B-to-Cのビジネスモデルにふさわしい戦略と体制をさらに強化していくことが求められている。コンシューマーヘルスケア事業は、タケダの戦略においては重点領域外になってしまうことに加え、日本のコンシューマーヘルスケア事業の売上比はタケダ全体の約2%に留まっており、その比率は近年減少を続けている。
TCHC社を成長させるには多額の投資が必要であるが、タケダが5つの主要なビジネスエリアで革新性の高い医薬品の創出に注力していることを踏まえると、優先度の高い資が難しい状況下にある。そこで、ヘルスケアのビジネスモデルを理解し、ブランド、事業、組織・人の成長に戦略的に投資でき、かつ当社が信頼を寄せることができるパートナーに託すのがベストであると苦渋の決断をした。候補先の選定にあたってはこの点を最優先に、慎重に検討を重ねて今日の決定に至っている。
Blackstoneは、製薬セクターを中心としたヘルスケア業界への投資の豊富な実績を有し、大企業への投資でも数多くの成功を収めていまる。ヘルスケアおよびコンシューマー関連の専任チームを擁し、リテールマネジメント、ブランド拡大、eコマース、コンシューマー分野で経験豊富なアドバイザーによるサポートの提供と、TCHC社の中長期的なビジネスの成長にコミットしている。
Blackstoneとのパートナーシップにより、TCHC社が独立した企業グループとして迅速かつ柔軟な意思決定を行うことで市場ニーズに即応することが可能になり、TCHC社の製品ブランドのより一層の成長および同社のさらなる発展に繋がるものと確信している。