大日本住友製薬の小田切斉取締役専務執行役員営業本部長、ジャパン・ビジネス・ユニット長は医薬通信社の取材に応じ、国内のCNS領域事業について「ラインアップが揃ってきた。現在、国内でもCNS領域の新たな薬剤の開発を進めており、パイプラインも充実している。将来的には、国内NO1を目指せる領域であると確信している」とコメントした。もう一つの国内の屋台骨である糖尿病領域については、「今年度よりエクア、エクメットの売上高も年間を通じてカウントされるようになるため、糖尿病領域では間違いなく国内NO1を達成するだろう」との見通しを示した。
同社の国内事業は、本年6月、待望の世界のブロックバスター「ラツーダ(非定型抗精神病薬)」を上市し、昨年9月のロナセンテープ(非定型抗精神病薬)の新発売と相まってさらなる飛躍の予兆を感じさせる。加えて、トルリシティ(2型糖尿病治療薬)の大きな伸長や、21年度にはイメグリミン(2型糖尿病治療薬)、22年度にはナパブカシン(結腸直腸癌)と期待の新薬上市ラッシュを迎える。
大日本住友製薬のバーチャル組織「ジャパン・ビジネス・ユニット」がスタートして2年余りが経過した。同ユニットは、一昨年4月、国内事業戦略を明確にするために、部門横断的に立ち上げられたもの。小田切氏は、同ユニット設立当初を「糖尿病領域は現在のような勢いはなかったし、CNS(精神神経科)領域も主力品がロナセン経口剤のみで、国内事業の立て直しが急務であった」と振り返る。
大日本住友製薬は、世界でブロックバスターに成長したラツーダを中心に北米市場での成長を遂げてきたが、国内事業の希薄感は否めなかった。
こうした中、ジャパン・ビジネス・ユニットが発足し、「CNS領域、糖尿病領域を屋台骨とする国内事業規模拡大を進めてきた」その間、CNS領域では、昨年9月に統合失調症治療剤としては世界初の経皮吸収型製剤であるロナセンテープ(非定型抗精神病薬)を新発売。本年6月には待望のラツーダを国内で上市した。ラツーダの米国上市時にマーケティング責任者として携わった小田切氏は、「私事ではあるが、国内でも立ち会えたのは非常に嬉しい」と意気込む。
統合失調症におけるロナセンとラツーダの使い分けについては、「どちらも急性期での有効性はもちろん維持期まで長期的に有用性がある薬剤であるが、薬理学的に受容体への親和性が異なる」と説明する。ロナセンはドパミンD2受容体に対する親和性が高く、ラツーダはドパミンD2に加え、セロトニン5-HT1A(セロトニン1A)、セロトニン5-HT7(セロトニン7)受容体に 対する親和性がある。薬理学的なプロファイルが異なるため、「患者個々の病態によって使い分けが可能だ」
昨年9月に発売したロナセンテープは、「1日1回の貼付で24時間安定した血中濃度を維持するため良好な有効性・安全性が期待できる」、「貼付の有無や投与量の視認による服薬アドヒアランスの向上」、「食事の影響を受けにくい」、「嚥下困難等経口服薬が困難なケースでも投与可能」など、製剤的な特徴を有する。
従って、ロナセンとラツーダは、統合失調症では「薬理学的プロファイルの違い」と「投与方法」による使い分けを客観的にディテールし、双極性障害うつ はラツーダの拡大に注力していく。
一方、糖尿病領域は、主力品である第一選択薬のメトグルコに加えて、週一回投与のGLP-1受容体作動薬トルリシティ(日本イーライリリーとの販売提携品)が、その優れた特性を糖尿病専門医から非専門医まで幅広く情報提供し著しく伸長した。現在、トルリシティは、糖尿病治療薬部門で国内売上トップの年間300億円規模を誇る。
さらに、昨年11月から、ノバルティスファーマとの販売提携品であるエクア(DPP-4阻害薬)、エクメット(DPP-4阻害薬・メトホルミン合剤)の販売を開始した。
メトグルコ、トルリシティを柱に、シュアポスト(速効型インスリン分泌促進薬)、グリミクロン(SU剤)のラインアップが揃っており、そこに新しくエクア、エクメットが加わる意義は大きかった。来年にはイメグリミンの上市も予定しており、糖尿病領域のラインアップはより充実される。
今後のさらなる国内事業の飛躍には、「CNSや糖尿病領域での新製品投入やオンコロジー領域での上市が不可欠で、さらなる提携も考えられる」と断言。加えて、「さらに効率化できるところがあればそれを進めるのと、デジタル革新もジャパン・ビジネス・ユニットの一つの課題である」と指摘する。
一方、昨今のコロナ禍では、Webを使ったディテール方式がクローズアップされがちであるが、「面談が必要かどうかは医療従事者側が決めることで、面談とWebのどちらの機能も併せ持っておく必要がある」と強調する。今後の大きな流れの中では、対面でのMR活動は縮小していく方向にあると考えられるが、大日本住友製薬では「面談とWebの両対応が原則となる」
また、Webを活用しても、医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインの遵守に抜かりはない。「Webでは、面談と違ったディテーリングの姿があるので、慎重に方法を検討した上で展開していきたい」と話す。
(談話室より抜粋)