マスク着用は感染防止よりも同調のため!? 同志社大心理学部研究グループ

中谷内氏

 同志社大学心理学部の中谷内一也教授らの研究グループは5日、新型コロナ感染が拡大しつつあった3月下旬に実施したマスク着用がどのような心理的要因と結びついているのかの全国調査分析結果を発表した。それによると、人々のマスク着用は、他の着用者を見てそれに同調しようとする傾向と強く結びついており、本来の目的であるはずの自分や他者への感染防止の思いとはごく弱い関連しかないことが判った。
 この春先、人々がマスクを求め国中が大騒ぎとなったが、感染予防は微弱な理由でしかなく、「他の人がマスクを着けているので自分もそうしたい」が主な理由であった。
 近年、人の判断・行動特性を理解し、それを踏まえて望ましい行動を促すナッジという手法が注目されている。今回の研究結果から、新型コロナへの各種対策行動を促すためには、人々の同調傾向を利用したナッジが有望であることが示唆された。
 だが、同調傾向を利用したナッジでは、他者の行動の可視性を高める必要がある。これは、お互いの監視を強化する窮屈な社会や、個人情報の拡散といった人権侵害を助長する恐れもある。中谷内教授は、「こうしたことを踏まえた上での慎重な取り組みが求められる」と指摘している。
 同研究成果は8月4日、オンライン学術雑誌Frontiers in Psychology(スイス)に掲載された。

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