アストラゼネカは15日、リムパーザ(一般名:オラパリブ)について、生殖細胞系列 BRCA 遺伝子変異陽性(gBRCAm)転移性膵がん治療薬として、EUで承認されたと発表した。リムパーザは、同疾患治療薬として承認された唯一のPARP 阻害剤となる。
膵がんは希少疾病であり、一般的ながんの中でも生存率が最も低く、生命を脅かす疾患である。転移性膵がん患者の約5~7%が gBRCAmを有している。欧州委員会による今回のリムパーザに対する承認は、The New England Journal of Medicineに掲載されたP3相POLO試験の結果に基づくもので、欧州医薬品庁の医薬品評価委員会による承認勧告を受けていた。
P3相POLO試験においてリムパーザは、gBRCAm転移性膵がん患者の病勢進行または死に至るまでの期間をほぼ2倍に延長し、その期間の中央値はプラセボ群の3.8カ月に対してオラパリブ群で 7.4 カ月であった。なお、同試験におけるリムパーザの安全性および忍容性プロファイルは、これまでの試験と概ね一貫していた。
今回の承認は、初回化学療法において、少なくとも 16 週間の白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法で病勢進行が認められなかった gBRCAm転移性膵腺がん患者に対するリムパーザ単剤維持療法を適応としている。
POLO試験の治験共同責任医師で、シカゴ医科大学教授のHedy L.Kindler氏は、「今回の承認により、転移性膵がんの発生率が最も高い欧州において、同疾患を有する患者に対するバイオマーカー主導による治療の新たな時代への道が開かれた」と強調。
その上で、「これからは、忍容性が良好な標的治療オプションとして、臨床医はリムパーザをgBRCAm転移性膵がんの患者に投与できるようになる」と説明する。
一方、アストラゼネカのエグゼクティブバイスプレジデント兼オンコロジービジネスユニット責任者のDave Fredrickson氏は、「転移性膵がんは、急速に進行する性質があるため、患者は長きにわたり予後不良を余儀なくされてきた。またその治療も過去数十年にわたってほとんど進歩がない状況であった」と明言。さらに、「今回の承認は、診断時において全ての患者に gBRCA検査の重要性を強く訴求するもので、欧州の患者への個別化治療選択肢に関する情報提供の一助となり得る」とコメントしている。
リムパーザは、P3相POLO試験の結果に基づき、gBRCAm 転移性膵がん患者の初回治療後の維持療法として米国をはじめ数カ国において承認されており、その他の地域においても薬事承認審査が進行中だ。なお、gBRCAm転移性膵がんに対するリムパーザの適応は、本邦では未承認である。