小野薬品は5日、蛋白分解酵素阻害剤「フオイパン」を用いた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する臨床試験を開始したと発表した。
フオイパンは、慢性膵炎および術後逆流性食道炎の治療薬として製造販売承認を取得している薬剤。新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスSARS-CoV-2 は、人の気道などの細胞にあるACE2 受容体に結合した後、ウイルス膜と細胞膜を融合させて侵入し感染する。
膜融合を起こすには、細胞側の蛋白分解酵素 TMPRSS2にウイルス表面のスパイクタンパク質を切断させる必要があり、フオイパン錠はこの酵素の働きを抑えるメカニズムを有しており、このカニズムの特徴から新型コロナウイルスに対しても効果が期待されている。
今回の臨床試験は、カモスタットメシル酸塩の有効性を示唆する基礎の論文報告とヒト血中濃度の関係性を踏まえ、より高い有効性を得るために、承認用量を超えた用量で実施し、健康成人における安全性を確認した上で、新型コロナウイルス感染症の患者を対象とした臨床試験を行う。
COVID-19は、世界的な脅威となっており、治療薬、ワクチンの開発が急務である。小野薬品は、すでに国内外の医療機関・研究機関からの要請に基づき臨床研究用製剤の供給を行っているが、治療薬となる可能性のある医薬品を有する企業として開発に取り組んでいく。
フオイパン錠は、小野薬品が創製した経口蛋白分解酵素阻害剤で、1985年に「慢性膵炎における急性症状の緩解」の効能・効果で製造販売承認を取得。1994 年には、「術後逆流性食道炎」の効能・効果も承認取得している。なお、同剤の物質特許は1996年1月に満了している。