大日本住友製薬の野村博社長は13日、オンラインによる決算説明会で会見し、「精神神経(CNS)・糖尿病領域での国内ナンバーワンと、北米事業のさらなる基盤強化と製品上市準備を目指す」考えを明らかにした。また、ロイバント社との戦略的提携後の財務方針についても、「当面は大型投資を実施せず、パイプライン獲得目的での投資を検討する」方針を示した。
国内NO1を目指すCNS領域では、本年6月にラツーダの上市を予定している。同剤は、統合失調症・双極性障害のうつ症状の両効能を有しており、早期の市場浸透に尽力する。
昨年9月末に新発売したロナセンテープは、本年9月末の投薬期間制限解除に伴う販売拡大を目指す。ラツーダの立ち上げは、「MRのface to faceによる情報提供活動も重要」とした上で、「新型コロナによる今後の影響は不透明なため、IMRも活用していく」方針を示した。
糖尿病領域は、「病態に応じた情報提供に基づいたトルリシティ、エクア、エクメットの販売拡大」と、「イメグリミン(2020年度上期申請予定)による糖尿病領域の更なるラインナップ強化」を推進する。
北米のさらなる基盤強化では、サノビオン社は「特許切れ(2023年)までにできるだけラツーダの収益を高めるとともに、本年9月にアポモルヒネの上市を予定している」
ナパブカシンは、「夏頃に結腸直腸がんの国際共同P3試験の結果が判明するスケジュールにあったが、新型コロナの影響で遅れる」
スミトモ・ダイニッポン・ファーマ・アメリカ社は、「本年4月より開始したシェアードサービスによる傘下のサノビオン社等の経営効率化と、ボストン・バイオメディカル社とトレロ社の抗がん剤を研究開発する両社の統合(本年7月予定)による効率化」を推進。
スミトバント社は、「ビベグロン(過活動膀胱 ユーロバント社)、レルゴリクス(子宮筋腫・前立腺癌 マイオバント社)の米国上市に向けた効率的な販売体制の構築支援および、サノビオン社の営業インフラの適切な活用の検討」を実施する。
一方、ロイバント社との戦略的提携後の財務状況については、R&D投資は、中期経営計画2022で目標とする「5年間で4500億円」を上回る見込みだ。野村氏は、「今後は、研究開発投資の効率化を図り、ロイバント社から取得したアセットを成長のために有効に使っていく」と強調。
M&A投資も、中計2022目標の「5年間で3000~6000億円」のうち3300億円を実施済みで、「当面は大型投資は実施せず、パイプライン獲得目的での投資は引き続き検討する」予定だ。
ポストラツーダとして注目されるSEP-363856についても言及し、「これまで実用化されてきたドーパミンブロッカーとは、全く異なる作用メカニズムを有している。現在、統合失調症治療薬として開発しており、有効性・安全性ともに非常に優れている」と明言。その上で、「統合失調症以外の適応症をどのうように拡大していくかが大きなポイントになる」と指摘した。
木村徹取締役常務執行役員も「北米でのラツーダの売上高(2000億円)の3/4は、うつが占めている。SEP-363856も、うつ、気分障害など、統合失調症以外の精神疾患に対しても適応症が取れる可能性がある」と示唆した。
野村社長は、北米におけるロンハラマグネア(COPD)の事業計画見直しについても、「当初は500億円程度の売上高を目標にしていたが、COPD領域では3剤合剤の薬剤が繁用されており、ロンハラマグネア単剤での浸透は難しいと判断した」
さらに、「こうした理由で売上目標を100憶円程度に設定し、CMやセールスレップのあり方を見直しして、できるだけコストを掛けずに、効果の高いプロモーションを進めている」と述べた。