塩野義製薬は28日、FETCROJA(セフィデロコール)について、欧州委員会(EC)より「治療選択肢が限られた18歳以上の患者におけるグラム陰性菌感染症治療」を適応として承認を取得したと発表した。
FETCROJAは、多剤耐性菌を含むグラム陰性菌の外膜を効果的に通過して抗菌活性を発揮する新規のシデロフォアセファロスポリン抗菌薬。世界保健機関により最優先の対応が必要であると考えられているカルバペネム系抗菌薬に耐性を示すアシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、腸内細菌科細菌のすべてに有効性を示す唯一の薬剤で、細菌のカルバペネムへの耐性獲得に関連する3つの主な機序(ポーリンチャネルの変異による膜透過性低下、bラクタマーゼによる不活化、排出ポンプの過剰産生)による影響を受けずに抗菌力を発揮する。
鉄と結合する独自の構造を有するので、細菌が養分である鉄を取り込むために利用する鉄トランスポーターを介し、細菌内に能動的に運ばれる。その結果、FETCROJAは細菌のペリプラズム内に効率よく取り込まれ、細胞壁合成を効率的に阻害する。
今回承認は、in vitroデータを含む非臨床の薬効薬理試験結果およびPK/PD解析による理論構築、ならびに3つの臨床試験(カルバペネム耐性菌感染症を対象とした国際共同試験 [CREDIBLE-CR]、複雑性尿路感染症を対象とした国際共同試験 [APEKS-cUTI]、院内肺炎を対象とした国際共同試験 [APEKS-NP])の結果をもとに判断されたもの。
FETCROJAは、グローバルで実施した感受性サーベイランス試験において、カルバペネム系抗菌薬に耐性を示すアシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、腸内細菌科細菌およびステノトロホモナス・マルトフィリアを含むグラム陰性菌に対し、in vitro下で広い抗菌スペクトルを示した。
また、ESBLs、AmpC、セリン型およびメタロ型カルバペネマーゼなどの問題となっているbラクタマーゼを産生する細菌に対してもin vitro活性を示した。
カルバペネム系抗菌薬に耐性を示すアシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、腸内細菌科細菌およびステノトロホモナス・マルトフィリアを含む薬剤耐性グラム陰性菌感染症の増加は、医療における重要課題となっている。これらの感染症の既存薬での治療は困難であり、致死率も上昇している。欧州で年間約2万5000人が多剤耐性菌への感染で死亡していると報告されている。何らかの手立てを打たなければ、2050年までに薬剤耐性菌感染症による全世界での死亡者数は1000万人、GDPに対する影響は100兆米国ドルにも及ぶと予測されている。
塩野義製薬では、現在、世界的な脅威となっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する取り組みも含め、必要とされる感染症治療薬の開発に引き続き尽力していく。なお、同件が2021年3月期の連結業績予想に与える影響は軽微である。
なお、同薬は2019年11月14日に米国で新薬承認されており、「FETROJA」の製品名で販売されている。