アストラゼネカは6日、イミフィンジ(遺伝子組換え治療薬)が、進展型小細胞肺がんの成人さんに対する一次治療として化学療法との併用療法で米国で承認されたと発表した。化学療法は、標準治療であるエトポシドとカルボプラチンまたはシスプラチンとの組み合わせ。
今回のFDAによる承認は、P3相試験CASPIAN試験結果に基づくもの。同試験において、イミフィンジと標準治療である化学療法との併用療法は、化学療法単独群と比較して統計学的に有意で臨床的に意義のある全生存期間(OS)の延長を示した。
小細胞肺がんは、悪性度が高く増殖の速いがんであり、化学療法で奏効が認められたとしても一般的に再発し、急速に進行する。
アストラゼネカのエグゼクティブバイスプレジデント兼オンコロジービジネスユニット責任者のDave Fredrickson氏は、「イミフィンジは、化学療法との併用療法で、有意なOS 延長と奏効率改善の両方を示す唯一の免疫治療薬である。今回の承認は、この重篤な疾患の治療において大きな一歩であると考えている」とコメント。
一方、Jonathan GoldmanP3相試験 CASPIAN試験治験責任医師(UCLA メディカルセンターの血液学および腫瘍学准教授)は、、「進展型小細胞肺がんの患者さんの予後は未だ不良であり、治療アウトカムを改善する新薬の発見は非常に難しい課題であった」と明言。その上で、「CASPIAN 試験の良好な結果により、イミフィンジとエトポシドおよびカルボプラチンまたはシスプラチンのいずれかとの併用療法の選択が可能となり、患者にとって重要となる新たな一次治療選択肢となる」と述べている。
P3CASPIAN試験では、 2 つの主要評価項目を設定し、イミフィンジと化学療法の併用療法群と化学療法群を比較した。その結果、イミフィンジと化学療法の併用療法群では、死亡リスクが27%低下し(ハザード比0.73に相当;95%CI 0.59-0.91; p=0.0047)、OS 中央値は化学療法群の10.3 ヵ月に対して13.0ヵ月であった。
加えて、イミフィンジと化学療法の併用療法群において、より高い客観的奏効率が得られた(化学療法群の58%に対して68%)。なお、イミフィンジと化学療法の併用療法における安全性および忍容性は、これらの薬剤における既知の安全性プロファイルと一致していた。
CASPIAN 試験で示されたイミフィンジと化学療法の併用療法のデータは ランセット3に掲載されている。また、イミフィンジと化学療法との併用療法にトレメリムマブを追加したもう一つの投与群の解析も完了しており、こちらは主要評価項目が達成されなかった。詳細なデータは、今後の学会で発表される予定。
CASPIAN試験では、標準治療である化学療法との併用療法群では固定用量のイミフィンジ(1500mg)を 3 週間ごとに4サイクル患者に投与し、その後病勢進行するまで 4週間ごとに投与した。広範な開発プログラムの一環として、イミフィンジは、P3相ADRIATIC 試験において、同時化学放射線療法を受けた限局型小細胞肺がん患者に対する治療薬としても検討されており、その解析データは2021 年に得られる予定である。
イミフィンジは、2020 年2月にシンガポールで進展型小細胞肺がん患者の治療薬として世界で最初の承認をP3相CASPIAN試験結果に基づいて取得している。現在、イミフィンジと標準治療である化学療法(エトポシドおよびシスプラチンまたはカルボプラチン)の併用療法は、進展型小細胞肺がんの一次治療薬としてヨーロッパおよび日本で承認審査中である。なお、進展型小細胞肺がんに対するイミフィンジの適応は本邦では現時点で未承認である。