塩野義製薬は17日、マイクロブラッドサイエンス(本社:東京、MBS社)と、新型コロナウイルスIgG/IgM抗体検査キット(COVID-19抗体検査キット)製品の導入に向けた業務提携の協議を14日付けで開始したと発表した。
世界各国で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染者が増加し、11日にはWHOからパンデミック(世界的大流行)宣言が出された。我が国でも、国を挙げての対策が進められている。
COVID-19患者を確定する検査法には、鼻腔や咽頭から採取した検体からウイルスの核酸を検出するPCR法(ポリメラーゼ連鎖反応)が用いられている。PCR法は、専用測定機を要し、検査結果が得られるまで比較的長時間を要するなど、簡便性や迅速性などの問題はあるものの、新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)患者確定には必須の検査法となっている。
こうした中、塩野義製薬では、新たな検査法としてMBS社が独自に中国内協力企業(Vazyme社)から輸入している簡便なCOVID-19抗体検査キットを導入し、必要とされる医療現場等への一刻も早い供給を目指し、販売および取り扱いに関して、MBS社との業務提携に向けた協議を進めている。
MBS社は、2009年6月に設立され、独自開発による微量採血器具とこれを用いた臨床検査サービスを展開する独創的かつ有用な技術を保有する企業である。MBS社が輸入するCOVID-19抗体検査キットは、新型コロナウイルス感染の初期に体内で産生されるIgM抗体と、IgMより若干遅れて産生・増加するIgG抗体の両方を一挙に免疫クロマト法(金コロイド法)で測定することを基本原理としている。
一滴の血液検体から極めて簡便に測定でき、10分で迅速に検査結果が得られるため、種々の現場での使用が可能だ。また、同検査キットは、感度94%、特異度97%と高い性能を有している(Vazyme社、中国内臨床試験データから)。
COVID-19抗体検査キットは、次のような適応や使用現場が想定される。
1. PCR検査前の「スクリーニング検査」として:①空港や港で検疫官(医師)の判断の下で行う入国者の検査、②COVID-19患者が勤務、登校していた事業所や学校、その他、クラスターでの接触者等の検査
2. 亜急性期や回復期のCOVID-19患者の免疫獲得状態の把握
3. その他、SARS-CoV-2 / COVID-19の疫学的調査や研究など
なお、同検査キットは、日本国内においては相川 直樹・慶應義塾大学名誉教授や感染症専門家との協議を重ね、既に舘田 一博・東邦大学医学部微生物・感染症学講座教授のもとで、日本での検査が試験的に進められている。塩野義製薬は、MBS社およびVazyme社との独占的供給契約が整い次第、必要とされる医療機関、検査施設、研究所等に対し本検査キットを届ける体制を両社連携の下で構築していくと同時に、国や地方自治体などへの寄付を含む提供方法の検討も進めていく。