小野薬品は9日、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤である「チラブルチニブ塩酸塩(ONO-4059)」について、「再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)」患者および「原発性マクログロブリン血症(WM)及びリンパ形質細胞リンパ腫(LPL)」患者を対象とした2つの臨床試験の結果を発表した。
同試験結果は、米国、フロリダ州で開催中の米国血液学会(ASH)年次総会において、7日および8日に報告されたもの。
再発又は難治性のPCNSL患者を対象とした多施設共同非盲検非対照国内P1/2相試験(ONO-4059-02)では、患者44例が登録され、チラブルチニブ 320 mg(20例)、480 mg(7例)および480 mg空腹時(17例)、いずれも1日1回の投与を受け、病勢進行または許容できない毒性が認められるまで投与が継続された。
同試験において、主要評価項目である中央判定による全奏効率(ORR)は63.6%(28/44例)(95%信頼区間(CI):47.8 – 77.6)であり、各投与群のORRは、各々60.0%(12/20例)(95%CI:36.1 – 80.9)、100.0%(7/7例)(95%CI:59.0 – 100.0)および52.9%(9/17例)(95%CI:27.8 – 77.0)であった。
また、副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)の中央値は2.9カ月で(95%CI:1.8 – 11.1)、各投与群の中央値は、各々2.1カ月(95%CI:1.8 – NE)、11.1カ月(95%CI:1.4 – NE)および5.8カ月(95%CI:1.0 – 5.8)。
全生存期間(OS)の中央値は未達(95%CI:NE – NE)でした。高頻度に認められたグレード3以上の有害事象(AE)は、好中球減少症(9.1%)、リンパ球減少症、白血球減少症、多形紅斑(各々6.8%)であった。
一方、 WM及びLPL患者を対象とした多施設共同非盲検非対照国内P2試験では、患者27例(未治療の患者18例および再発又は難治性の患者9例)が登録され、チラブルチニブ 480 mg空腹時、1日1回の投与を受け、病勢進行または許容できない毒性が認められるまで投与が継続された。
同試験において、主要評価項目である中央判定による全奏効率(部分奏効以上)は、未治療の患者が88.9%(16/18例)(95%CI:65.3 – 98.6)、再発又は難治性の患者が88.9%(8/9例)(95%CI:51.8 – 99.7)であった。
また、副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)については、未治療の患者並びに再発又は難治性の患者のいずれにおいても、6カ月時点の無増悪生存率および生存率は100%を示した。
高頻度に認められたグレード3以上の有害事象(AE)は、好中球減少症とリンパ球減少症(各々11.1%)、白血球減少症(7.4%)。
PCNSLは、初発時に病変が脳脊髄(眼を含む)に局在する悪性リンパ腫で、国内での年間発症数は約980人と推定されている。PCNSL患者が呈する徴候および症状は病変部位により異なり、局所神経障害、神経精神症状、頭蓋内圧上昇に関連する症状、発作、眼症状、頭痛、運動困難、脳ニューロパチー、神経根障害などがある。
現在、未治療PCNSL患者には高用量メトトレキサート療法を基盤とする薬物療法およびその後の全脳放射線療法が行われており、一部の患者集団で長期寛解するものの、多くの患者は再発に至っている。
また、初回治療が奏功しない難治性患者も存在する。再発又は難治性のPCNSL患者に対しては標準治療が確立されておらず、治療選択肢は限定的であり、新たな治療薬が望まれているのが現状だ。
なお、小野薬品は、本年8月28日に「再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫」に対する効能又は効果に係るチラブルチニブの国内製造販売承認申請を行っている。