武田薬品は7日、現在実施中のデング熱ワクチン(TAK-003)のグローバルP3相試験(TIDES試験)で、同剤は、4~16歳の小児・若年層において、主要評価項目であるウイルス学的に確認されたデング熱感染(VCD)に対する予防効果を示したと発表した。
TIDES試験は、デング熱流行地域であるラテンアメリカおよびアジアの2万名以上の被験者に対し、3か月間隔でデング熱ワクチン2回接種もしくはプラセボ接種で比較したもの。
その結果、TAK-003の初回接種3か月後に2回目を接種した後、12か月の追跡期間におけるワクチン有効率(VE)は80.2%(95%信頼区間:73.3%~85.3%、p<0.001)であった。
また、あらかじめ設定されていた副次評価項目の探索的解析では、デングウイルス感染歴のある被験者および感染歴のない被験者において同様の予防効果が示された(それぞれVE:82.2%[95%信頼区間:74.5%~87.6%]、VE:74.9%[95%信頼区間:57.0%~85.4%])。
その他の探索的解析では、デング熱による入院が95.4%減少したことが示された(95%信頼区間:88.4%~98.2%)。重症感染例に対する有効性は、症例数が少数であったため評価不能であった。
TAK-003の初回接種から予防効果が見られ、初回接種と2回目接種の間におけるVEは81%(95%信頼区間:64.1%~90.0%)であった。TAK-003の忍容性は全般的に良好であり、現時点で重大な安全性の懸念は報告されていない。
同試験で示された安全性プロファイルは、これまでに実施されたTAK-003の臨床試験と同様であった。武田薬品、TIDES試験を継続実施し、トータル4.5年間の安全性および有効性を評価する。これらの解析結果は、New England Journal of Medicine(HEJM)に掲載された。
デング熱は、最も急速に感染が拡大している蚊媒介感染症で、世界保健機関(WHO)は、2019年のグローバルヘルスに対する10の脅威の1つにデング熱を挙げている。デング熱は主にネッタイシマカ、および比較的低い割合でヒトスジシマカによって媒介され、4 種のウイルス血清型すべてがデング熱または重症型デング出血熱を引き起こす可能性がある。
個別の血清型羅患率は、地理、地域、国や季節によって異なり、また時間の経過とともに変化していく。ある血清型のウイルスに感染した場合、その血清型に対する免疫は一生涯続くが、後に異なる血清型のウイルスに感染した場合、重症化のリスクが高まる。
デング熱はパンデミックの可能性がある感染症で、熱帯または亜熱帯地域で流行し、近年では米国およびヨーロッパの一部でも流行した。世界の人口の約半分がデング熱の脅威にさらされており、世界全体で約3.9億人が感染し、2万人が毎年死亡している。
デング熱は、あらゆる年齢層の人々が感染する可能性があり、ラテンアメリカおよびアジアの子供達にとっては重篤な疾患を引き起こす主な要因となってい
る。
NEJMに掲載された論文の筆頭著者であるHumberto Reynales, M.D., Ph.D.は、「この初回解析結果は大変喜ばしいものであり、TAK-003がデング熱およびデング熱に伴う入院に対し、重要な公衆衛生上の利益をもたらし得ることを示している」と説明。
その上で、「本ワクチンの長期的な有効性と安全性を評価するため、継続的に試験結果を解析していくことが重要」と指摘し、「より長期間の追跡データによって今回の初回解析結果が裏付けられた場合、デング熱の治療に取り組む世界中の人々にとって極めて重要な一歩になる」とコメントしている。