メルクは、世界23カ国の4585人の女性を対象とした調査に基づく「Supporting Women With Cancer(女性がん患者を支えて)報告書」を発表した。
「Supporting Women With Cancer」プログラムは、APECのグローバルプロジェクトである「健康な女性と健全な経済」イニシアチブの一環として実施されたもの。
同イニシアチブは、患者や政府、医療従事者、雇用主、その他のステークホルダーがともに女性の健康改善の推進による女性のコミュニティへの参加と活躍、適切な評価の支援を目的とする。
今回の調査により、「がんとともに生きる女性の支援には、政府や医療従事者、雇用主、関連団体の協力が必要」、「支援強化のための議論や行動を進めるべき地域、患者年齢層」、「日本では、社会的サポートを十分に得られていないと感じる女性がん患者が多い」などの実態が明らかになった。
具体的には、「がんと診断された女性が仕事を続けるために十分な支援を受けている」と回答したのはわずか5人に1人(20%)。
がんと診断される前に徴候や症状を自覚していた女性は45%で、がん検診制度を利用したことがない女性は半数近く(47%)に上ることが判明した。
これらの調査結果は、「がんについての理解促進」、「検診や支援サービスの認知拡大」、「検診へのアクセス向上の必要性」を示唆している。
さらに、4分の1(25%)の女性は、がんであることで男性よりも疎外感を抱いていることも明らかとなった。
メルク・グローバルヘルスケアCEOのベレン・ガリーホ氏は、「我々は、治療効果の高い薬剤開発に取り組むだけでなく、がんに罹患した女性に寄り添い、困難に直面した暮らしを支えていきたい」と明言。
その上で、「今回の調査では、女性がん患者の健康とQOLを高めるために検討が必要な数多くの要素について、直接的な情報を得ることができた」と話す。
国際対がん連合(UICC)の協力のもと設計された同調査では、3分の1(34%)の女性が、「がんと診断された後に雇用主から全く支援を受けていない」と回答。
また、出産可能な年齢の女性で、「医療従事者からファミリープランニングのアドバイスを受けた」と答えたのは半数以下(45%)に過ぎなかった。
様々な困難を抱えたときに「支援サービスを利用した」と回答した女性も42%のみで、がんについて学ぶためのリソースや支援サービスの認知度は低く、患者が本当に求めているものにシフトさせる必要がある。
さらに調査では、「女性のがんに関する知識向上の支援」の必要性も明確になった。その理由は、多くの女性が、肺がんや大腸がんなど、一般的に女性のがんと認識されていないがん種のリスクを過小評価していたためだ。
また、高齢女性や「低・中所得国」および「高・中所得国」の女性が、がんの徴候や症状を診断前に認識していた割合は、高所得国の女性より低い結果となった。
これらの調査結果は、所得や教育水準に関わらず、女性にとってリスクの高いがん種の徴候や症状、リスク要因について、女性の理解を一層促進させる必要があることを示唆している。
UICCのケアリー・アダムズCEOは、「私達は、がんの症状について女性の理解促進のためにあらゆる手段を講じなければならない」と断言。
さらに、「女性特有のがん種に限らず、肺がんや大腸がん、胃がんなども同様で、UICCは、世界のがんコミュニティに対し、がんの徴候や症状について女性の理解促進を支援し、生存率の高いステージで診断できるよう呼びかけている」と強調する。
がんの早期診断は、治療の成功機会を高めると考えられており、がん検診制度や検診受診への理解促進の必要性が同調査で明らかになった。特に、「低・中所得国」の女性では、診断が遅れる例が多く見られた(55%)。
その理由の上位3つは、「症状を深刻に受け止めなかった」(52%)、「がんと診断されるのが怖い」(38%)、「費用がかかるため診察を受けるのが遅れた」(29%)と続く。
また、18~40歳の女性も、他の年齢層と比べて診断が遅れる傾向にあり(49%)、その主な理由は「症状を深刻に受け止めなかった」(43%)が多数を占めた。