早稲田大学理工学術院先進理工学研究科の寺田泰比古教授と浅井裕一郎助手の研究グループは17日、筑波大学長の永田恭介教授らと共同で、急性骨髄性白血病(AML)の原因のSET/TAF1 (SET)がん遺伝子が、染色体分配を正確に制御し、がん遺伝子産物であるSETタンパク質の異常が、細胞のがん化を促進する分子機構を世界で初めて解明したと発表した。
寺田教授らは、まず、SETが、細胞の増殖においてAurora Bキナーゼ(リン酸化酵素)やPP2A(脱リン酸化酵素)とともに第3の張力センサーとして染色体分配を正確に制御する仕組みを解明した。この仕組みが働くことで、我々の遺伝情報が正確に子供達へ受け継がれる。
さらに、がん遺伝子産物のSETタンパク質の異常が、染色体の中心領域であるセントロメアの張力センサーシステムを破壊し、染色体の分配制御を撹乱させて染色体異常を誘導することで、がん化の原因になる分子機構を分子生物学的手法によって明らかにした。
同研究成果は、急性骨髄性白血病等のがんの治療に貢献し、抗がん剤の創薬研究において重要な基盤情報になると期待される。