薬機法改正案に「地域連携薬局」、「専門医療機関連携薬局」が盛り込まれるなど、超高齢化社会に向けて“薬局の在り方”が大きな変革期を迎えている。そこで、藤垣哲彦大阪府薬剤師会会長に、大阪府薬の事業計画も踏まえて、薬局・薬剤師が生き残るための取り組むべき課題を聞いた。
藤垣氏は、薬剤師が生き残りをかけて取り組むべき重点課題として、①かかり付け薬剤師の育成②健康サポート薬局の育成③後発医薬品の促進④医薬品適正使用の推進ーを挙げる。
その中で、かかり付け薬剤師の育成については、「患者のための薬局ビジョンを粛々と推進していく以外に手立てはない」と言い切る。同ビジョンは、2015年10月に厚労省が打ち出したもので、「完全な服薬情報の一元化」、「薬局の24時間対応」、「在宅医療への取り組み」「医療機関等の連携」などが訴求されており、地域包括ケアシステムの中に薬剤師がいかに溶け込んでいくかが大きなポイントになっている。
患者さんに分かる薬局の特徴が必要不可欠に
藤垣氏は、「患者さんに“自分はかかりつけ薬局・薬剤師を持っていて、有用に活用している”という認識を持ってもらうことが重要で、そのために薬局・薬剤師は何をすべきかを考えねばならない」と訴えかける。さらに、「昔は薬局に対して、どこへ行ってもある一定のサービスが受けられる“金太郎飴”のような認識が強かったが、最近の発想は異なってきている」と明言する。
その上で、「薬局の存続には、どんな些細なことでも良いので患者さんに気付いて貰えるような特徴を前面に押し出せるかどうかが大きなポイントになる」と断言し、「地域連携薬局、専門医療機関連携薬局と薬局を機能分類する形で薬機法改正が進められいるのも、薬局に特徴を出せということに尽きる」と改めて薬局のその重要性を強調する。
加えて、「かかり付け薬剤師の育成においても、薬局の特徴を出すという点をクローズアップしていくことが不可欠となる」
かかりつけ薬剤師の育成は2025年までを目途としているが、同期間内には2回程度の診療報酬改定が行われれる。「その時には先が見えて来るので、今からきちんとした準備が必要になる」
一方、健康サポート薬局の育成は、“国民からの自然の要望”といっても過言ではない。現在、大阪府下に147件の健康サポート薬局が存在するが、「総数では全国的にみて多いレベルにあるものの、住民一人当たりの件数は決して多いと言えない」と分析。
さらに、「国民皆保険制度を維持するためにも、健康サポート薬局の育成をしっかりと進めて行かねばならない」と訴えかける。
後発医薬品(GE)の使用促進は、全国的にみて使用率が低い大阪府薬にとっても重要な課題の一つだ。皆保険制度維持のために後発医薬品使用促進が不可欠となるのは言うまでもない。
藤垣氏は、「GEは有効性、安全性の担保がされており、ほぼ先発品と同等の薬剤が多数ある」と指摘し、「薬剤師はGEの正確な知識を収集して、患者さんに丁寧に説明することが、使用促進の大きな手立てになる」と明言する。
また、医師へのフィードバックも忘れてはならない。「医師は、薬局がどのGE替えられたのか不安を持っているため、お薬手帳等で確認してもらえるようにすることも重要である」
大阪府薬では2018年度より、後発医薬品の使用促進モデル地区(泉南、門真、八尾など)を決めて後発医薬品使用による医療費削減効果などを弾き出す事業を展開している。19年度は、同事業を府下全体に拡大していく方針を示している。
後発医薬品の使用促進は、高額医薬品を保険適用する上でも重要な施策だ。ノバルティスのがん治療薬「キムリア」が、5月15日に中医協で保険適用が了承され、22日より保険適用された。
同剤には3349万円という過去最高の薬価が付けられた。米国での価格(約5200万円)は下回ったものの、一般社会でも高額医薬品として大きな話題を呼んだのは記憶に新しい。日本国内でのキムリア対象患者数は、ピーク時で年間216人、市場規模72億円と予測されている。
医療現場では、“来年9月までに後発医薬品使用率80%”の目標達成に向けて尽力しており、現在、後発医薬品使用促進による医療費削減効果は1300~1400億円に上ると推計されている。
藤垣氏は、「後発品使用促進による医療費削減効果は評価に値するが、少子高齢化の進展、加えてさらなる高額医薬品の保険適用が続けば、医療保険財政がより一層厳しさを増すのは疑う余地がない」と断言する。
高齢者のポリファーマシー
エビデンスに基づいた処方提案を
その一方で、「海外の効能効果の高い薬剤を日本ですぐに採用できるように薬機法が改正されたこともあり、高額医薬品に対するコメントは出し難い」と本音を明かす。
医薬品の適正使用における最重要事項の一つにポリファーマシーがあり、大阪府薬でも令和元年の事業計画の大きな目玉としてポリファーマシーに取り組んでいる。
こうした中、「ポリファーマシーにおいて、医師が余分な医薬品を処方しているというようなイメージを持っていると、全く違った方向に行く」と懸念する。
医師は疾患を治療するために薬剤を投与するのであって、処方権も持っている。従って、「その点を認めながら、薬剤師は高齢者の多科受診の患者の重複投与や、安全性・適正使用の面から薬剤を減らしていく動きを活発にすることが重要となる」
特に、「高齢者で6剤以上の薬剤を服用している人の再入院率が高い」等のデータが報告されており、「薬剤師には、こういったエビデンスに基づいた処方提案が求められている」と力説する。
製薬企業の医薬品情報提供の在り方については、「今回の薬機法改正により、外箱にQRコードを付けて納付書の変更点をリアルタイムで見れるようになったのは大きい」と高評価する。一方、「製薬協のプロモーションコードは、我々も分からない点が多く、MRが保険薬局に対して医薬品情報提供をカバーすることは難しい」とした上で「近年、MR試験に合格しているMSは珍しくない。保険薬局においては、同効薬剤を公平に評価できるMSを活用した医薬品情報の提供が望ましいと思う」と提案。
製薬企業に対しては、「有効性情報も必要だが、我々が最も知りたいのは安全性情報である。特に、シャープな効き目の薬剤は、重篤な副作用の生体的な特徴にどのようなものがあり、どうすればそれを回避できるかについての情報提供に力を入れてほしい」と要望する。
厚労省より4月2日に出された「調剤業務の在り方」の通知にも言及し、「調剤の概念が変わるわけではない」と断言。その理由を「ここからここまでは薬剤師、この部分は非薬剤師と調剤業務が刻まれたものではなく、調剤は全て薬剤師が責任を持って見なければならないためである」と説明する。
さらに、「今回の通知の根底には、効率的なAIや非薬剤師の活用により、薬剤師は人との接点を増やして患者の相談を受けるという概念があることを忘れてはならない」と訴求する。
また、同通知では、「手順書を作って非薬剤師をしっかりと研修する」ように要望している。この非薬剤師の研修について藤垣氏は、「日薬がしっかりと研修制度を作ってリードしなければ、今回の非薬剤師の活用が明確な需給予測のないままテクニシャン制度等の制度化につながって行く可能性が高い」と警鐘を鳴らす。
高齢者のポリファーマシー
エビデンスに基づいた処方提案を
その一方で、「海外の効能効果の高い薬剤を日本ですぐに採用できるように薬機法が改正されたこともあり、高額医薬品に対するコメントは出し難い」と本音を明かす。
医薬品の適正使用における最重要事項の一つにポリファーマシーがあり、大阪府薬でも令和元年の事業計画の大きな目玉としてポリファーマシーに取り組んでいる。こうした中、「ポリファーマシーにおいて、医師が余分な医薬品を処方しているというようなイメージを持っていると、全く違った方向に行く」と断言する。
医師は疾患を治療するために薬剤を投与するのであって、処方権も持っている。従って、「その点を認めながら、薬剤師は高齢者の多科受診の患者の重複投与や、安全性・適正使用の面から薬剤を減らしていく動きを活発にすることが重要となる」 特に、「高齢者で6剤以上の薬剤を服用している人の再入院率が高い」等のデータが報告されており、「薬剤師には、こういったエビデンスに基づいた処方提案が求められている」と力説する。
製薬企業の医薬品情報提供の在り方については、「今回の薬機法改正により、外箱にQRコードを付けて納付書の変更点をリアルタイムで見れるようになったのは大きい」と高評価する。その一方で、「製薬協のプロモーションコードは、我々も分からない点が多く、MRが保険薬局に対して医薬品情報提供をカバーすることは難しい」とした上で「近年、MR試験に合格しているMSは珍しくない。保険薬局においては、同効薬剤を公平に評価できるMSを活用した医薬品情報の提供が望ましいと思う」と提案する。
製薬企業に対しては、「有効性情報も必要だが、我々が最も知りたいのは安全性情報である。特に、シャープな効き目の薬剤は、重篤な副作用の生体的な特徴にどのようなものがあり、どうすればそれを回避できるかについての情報提供に力を入れてほしい」と要望する。
厚労省より4月2日に出された「調剤業務の在り方」の通知にも言及し、「調剤の概念が変わるわけではない」と断言。その理由を「ここからここまでは薬剤師、この部分は非薬剤師と調剤業務が刻またものではなく、調剤は全て薬剤師が責任を持って見なければならないためである」と説明する。さらに、「今回の通知の根底には、効率的なAIや非薬剤師の活用により、薬剤師は人との接点を増やして患者の相談を受けるという概念があることを忘れてはならない」と訴えかける。
また、同通知では、「手順書を作って非薬剤師をしっかりと研修する」ように要望している。この非薬剤師の研修について藤垣氏は、「日薬がしっかりと研修制度を作ってリードしなければ、今回の非薬剤師の活用が明確な需給予測のないままテクニシャン制度等の制度化につながって行く可能性が高い」と警鐘を鳴らす。