ヤマト運輸は、12月6日より持続的な医薬品輸送ネットワークの構築に向けドローンの経済的実現性を検証する実証実験を開始する。実証実験は、ヤマト運と岡山県和気町が10月22日に締結した「ドローン輸送に関する連携協定書」に基づくもの。地域の医療機関が必要としている医療商材や個人宅までの処方薬などの輸送におけるドローンの経済的実現性の検証を目的としており、「ドローンによる医薬品配送に関するガイドライン」に準拠した実験となる。
高齢化、過疎化が進む地域では、医薬品流通ネットワークの維持が深刻な社会課題となりつつある。特に、中山間部ではコロナ禍でオンライン診療が普及しても、患者が処方薬の受取り手段を確保できないといった新たな課題も顕在化している。
さらに、各地で労働力不足が危惧される中、医薬品流通に関わる全ての事業者が一体となり、新たな輸送モードを駆使した持続的な医薬品流通ネットワークの構築による社会課題の解決が求められている。
ヤマト運輸は、課題解決に向け持続的な医薬品輸送ネットワークの早期構築を目指しているが、その有効な輸送モードとして期待されるドローンは、2022 年度に「レベル4」飛行に対する許可・承認制度を新設する航空法の一部改正が予定されている。
岡山県和気町は岡山県の東南部に位置し、吉備高原から連なる標高200~400mの山々に囲まれた自然豊かな町であるが、中心部を離れると高齢化による買い物難民や交通弱者の増加、老朽化したインフラ対策といった様々な地域課題に直面している。
和気町は、これらの地域課題を解決する手段のひとつとして、2018年から積極的にドローンを活用した実証実験を推進してきた。
今回、参画パートナーである病院、調剤薬局、医薬品卸と伴に、ヤマト運輸と和気町では、医薬品卸や宅急便センターから医療機関、オンライン診療・服薬指導から山間部の個人宅への一貫医薬品流通におけるドローン輸送の経済的実現性と、解決すべき課題を明確化するための実証実験を行う。
実証実験では、まず、対象エリアに配達を行う医療用医薬品等の商品を医薬品卸ティーエスアルフレッサの物流拠点からヤマト運輸が集荷する。
その後、宅急便センターから医療機関までの納品および、オンライン診療・服薬指導後の処方薬の患者宅までへの配送を「ドローンによる医薬品輸送のガイドライン」に準拠した業務手順書をもとにその有用性と、経済的実用性の検証と解決すべき課題の明確化を行う。
具体的な検証内容、使用する機体とスペック、検証機関は、次の通り。
【検証内容】
①有用性の検証
・医薬品輸送におけるドローン輸送の品質に関する課題の洗い出し
・離発着の荷役作業、運行のオペレーションの具体化と課題の洗い出し
②経済的実現性の検証
・商材や環境に適合する機体の必要スペックの確定
・全ての参画パートナーにとって経済合理性があるかの想定コストシミュレーションの検証
【使用する機体とスペック】
1、宅急便センター~医療機関(医薬品卸納品スキーム)
◆会社・型式名:ヤマハ発動機「Fazer R G2」
◆サイズ(cm):全長縦367(ローターを含む)
◆横全幅73全高123
◆航続距離(km):90 ※衛星通信使用
◆航続時間(時間):1.67(100分)
◆運べる重さ(kg):35.0
2、医療機関~個人宅(処方薬配送スキーム)
◆会社・型式名:空解「Qukai Fusion」
◆サイズ(cm):全長148全幅210全高51
◆航続距離(km):120
◆航続時間(時間):2
◆運べる重さ(kg):2.5
【検証期間】
2021年12月6日~2022年1月末までの計12日間を予定。2022年2月以降は、ヤマト運輸が第2フェーズとして、ドローンポートを使用せず個人宅へ離着陸する技術検証および、ドローン運航の内製化検証を行う。
また、都市部でもドローンの社会実装に向けた取り組みを進め、将来的には複数の温度帯における医薬品輸送や宅急便の配送など、ドローンの活用を広げていく。
一方、和気町は、町内における医薬品輸送ネットワークおよびオンライン診療体制の構築をヤマト運輸と一体で進めることで、持続的な医療提供体制の確保、安心して住み続けられるまちづくりを目指す。