「スマート放射線がん治療室」がNEDOの研究開発型スタートアップ支援事業に採択 ビードットメディカル

スマート治療室によるワークフローのイメージ

 ビードットメディカル(本社:東京都)は6日、国立成育医療研究センターと共同で、「スマート放射線がん治療室の実用化開発」のテーマで国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究開発型スタートアップ支援事業(PCA)に採択されたと発表した。
 ビードットメディカルがNEDOに採択されたのは、2019年の企業間連携スタートアップに対する事業化支援(SCA)に続いて2度目。同社、今回のNEDO採択により、スマート治療室の開発を開始すると共に、小型陽子線がん治療装置の開発も加速していく。さらに、これらを組み合わせることで陽子線治療の価値を高めると共に、世界中のがん患者が陽子線治療を受けることができる社会を目指す。

開発中の小型陽子線がん治療装置


 陽子線治療は、ピンポイントで腫瘍を狙い撃ちできる非常に高度な治療方法だ。だが、ピンポイントがゆえに、腫瘍周囲の正常な組織や臓器に照射された場合、その臓器に多大なダメージを与えるリスクがある。
 これを避けるためには、照射位置に患者さまの位置を合わせる患者位置決めという作業を正確に行う必要がある。この患者位置決めは、治療の中で大部分の時間を占め、高齢の患者や小児がん患者は、さらに時間を要する。放射線治療提供において、準備作業による治療室占有時間の長さは課題の1つとなっている。
 スマート放射線がん治療室は、位置決めと治療の両方を同じ治療室で行う従来の位置決め方法とは異なり、位置決めと治療を別々の部屋で行うという新たな試みとなる。スマート治療室は、患者の治療スケジュールを最適化して管理するAIスケジューラー、自動走行で患者を運ぶシャトル治療台、位置決めを安全に行う3次元カメラなどの技術を組み合わせたシステムである。
 このスマート治療室は、陽子線治療だけなく、一般に広く知られているX線治療においても応用可能だ。スマート治療室の実用化が進めば、患者1人あたりの治療室の占有時間を短縮し、より多くの患者に治療を提供できるようになる。

藤氏

◆藤浩氏(国立成育医療研究センター放射線診療部放射線治療科診療部長)のコメント
放射線治療時の位置合わせは、治療効果や副作用に影響する重要な技術である。小児は成人に比べ、位置合わせが困難で時間がかかる。そのため治療時の苦痛の増加、治療装置の効率低下をまねく。これは、小児がんの粒子線治療の受け入れ、導入の障壁にもなっている。
 同社が開発中の「スマート放射線がん治療室」は、このような小児がん治療の課題を解決する画期的技術となる。当センターは「スマート放射線がん治療室」開発を支援し、実用化を目指していく。

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