アッヴィは20日、経口BCL-2阻害薬ベネトクラクスについて、再発/難治性の慢性リンパ性白血病(CLL)および小リンパ球性リンパ腫(SLL)治療薬として製造販売承認を取得したと発表した。
ベネトクラクスは、BCL-2と呼ばれる体内の特定タンパク質を標的とする経口BCL-2阻害剤で、がん細胞で失われてしまったアポトーシスを回復させる作用を有する。
今回の承認は、国内P1/2試験および、21カ国、389人の再発/難治性CLL患者を対象としたMURANOP3試験データに基くもの。同承認により、ベネトクラクスは、再発/難治性のCLLおよびSLL患者に対して、従来の殺細胞性の化学療法を含まない、新たな治療選択肢となる。
CLLは、一般的に緩徐な経過を示し、予後不良因子を有するCLL患者さんを除き、標準治療により初回奏効が高い割合で認められるが、その後の再発は避けられない。
後続の治療により奏効が導かれることもあるが、奏効率は順次低下し、奏効期間も短くなる。17番染色体の短腕欠失(17p欠失)またはがん抑制遺伝子TP53に変異を持つCLL患者は、予後不良であることが知られている。
CLLに対する治療薬は、海外に比べて国内では選択肢が少なく、既存治療に対して再発/難治性を示す患者、特に既存治療では効果不十分な染色体17p欠失を有する患者に新たな治療薬の登場が待たれていた。
松村到近畿大学医学部血液・膠原病内科教授は、「ベネトクラクスは、これまでの薬剤とは全く異なる作用機序を有する新規薬剤で、再発/難治性のCLLおよびSLL患者において、一定期間の治療によって無増悪生存期間延長が示されている」と報告。
さらに、「一部の患者において微小残存病変(MRD)を陰性化するため、今後、ドラッグオフを視野に入れた新たな治療選択肢となるものと期待される」との見解を示した。
一方、MURANO試験は、多施設無作為化非盲検国際共同試験で、再発/難治性CLLにおいて、ベネトクラクスとリツキシマブ(遺伝子組換え)併用投与群と、標準治療の一つである化学免疫療法のベンダムスチン塩酸塩とリツキシマブ(遺伝子組換え)併用群とを比較するP3試験。
主要評価項目である無増悪生存期間において、24カ月の固定投与期間終了後のベネトクラクスとリツキシマブ(遺伝子組換え)併用投与群のベンダムスチン塩酸塩とリツキシマブ(遺伝子組換え)併用群に対する優越性が検証され、層別ハザード比:0.17(95%Cl:0.11-0.25)との結果を得ている。
有効性副次評価項目では、ベネトクラクスとリツキシマブ(遺伝子組み換え)併用投与群において全奏効率92.3%を達成し、末梢血MRD陰性率62.4%を達成した。
MRD陰性(uMRD:undetectable)とは、治療終了後に血液または骨髄中に残るCLL細胞が白血球1万個中1個未満と定義される客観的な指標。