武田薬品は8日、TAKHZYRO(一般名:lanadelumab)皮下注射剤について、12歳以上の遺伝性血管性浮腫(HAE)患者の発作を抑制する発作予防薬として、中国国家薬品監督管理局(NMPA)より承認を取得したと発表した。
TAKHZYROは、HAE患者の体内ではコントロール不良な酵素である血漿中カリクレイン活性を阻害する完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)で、HAE の発作抑制に効果がある。
HAEは、世界中で推定約5万人に1人が罹患している希少な遺伝性疾患で、腹部、顔面、足、性器、手、喉など、体のさまざまな部分で浮腫(腫脹)の発作を繰り返し引き起こし、身体の衰弱や痛みを伴うこともある。また、喉頭部で発作が起こった場合には、気道を遮断して窒息を引き起こすリスクがあり、生命を脅かす可能性がある。
武田薬品は、今後5年間に中国においてTAKHZYROや革新性の高い14医薬品のアクセス拡大に取り組んでおり、今回のマイルストンは、世界中のHAEのコミュニティを支援するという同社の継続的なコミットメントを示すものである。
125名のHAE 患者を対象に、26週間にわたり実施されたP3試験である HELP(遺伝性血管性浮腫の長期予防)試験おいて、TAKHZYROを2週ごとに 300mgを投与された群では、プラセボ群と比較して、HAEの月間平均発作回数を87%、また4週ごとに300mgを投与された群では、73%減少さた(調整後P 値 <0.001)。
事前に定められた探索的解析では、26週間の全試験期間(0~182 日目)で、TAKHZYRO300mgの2週間ごとの投与を受けた患者の44%(n=12/27)が無発作だったのに対し、プラセボの投与を受けた患者では 2%(n=1/41)であった。
事後感度解析では、定常状態(70~182 日目)において TAKHZYRO300mgを2週間ごとに投与された患者の77%(n=20/26)が無発作だったのに対し、プラセボを投与された患者では 3%(n=1/37)であった。投与期間全体を通じて、TAKHZYRO 投与下において最も多く報告された有害事象(HAE 発作を除く)は、注射部位疼痛(42.9%)、ウイルス性上気道感染(23.8%)、頭痛(20.2%)、注射部位紅斑(9.5%)、注射部位挫傷(7.1%)および浮動性めまい(6.0%)であった。
治験薬投与下で発現した有害事象の重症度は、ほとんど(98.5%)の場合で軽度または中等度であった。HELP 試験、HAE 患者を対象としたこれまでで最大規模の無作為化対照比較予防試験である。
TAKHZYROの半減期は約2週間であり、医療専門家から皮下注射の方法についてのトレーニングを受けた場合のみ、2週間に1回の皮下注射として自己投与が可能である。推奨される初期投与量は2週間ごとに300mgである。6カ月以上にわたりコントロールが良好(例えば無発作)な場合、TAKHZYROの300 mg、4 週間ごとの投与でも有効であるため、検討が可能である。臨床試験では、過半数の患者で注射による投与にかかった時間は 10~60 秒であった。
TAKHZYROは、すでに 20を超える国で承認されており、それ以外の世界中の国や地域でも承認申請を行っている。
Hereditary Angioedema InternationalのChief Regional Patient Advocate であるFiona Wardman 氏は、「HAE は、予測不可能で、痛みを伴い、体を衰弱させる浮腫(腫脹)の発作を引き起こす、重篤で生命を脅かす可能性のある遺伝性の疾患である。これまで中国では、HAEの患者が使用できる新しい治療薬はなく、発作予防にはアナボリックアンドロゲンやトラネキサム酸、また緊急時には新鮮凍結血漿に頼っていつ」と紹介。その上で、「HAE発作の予防にTAKHZYROを投与できることは、この慢性疾患に苦しむ患者にとって大きな進展となる」と強調している。