フェニルケトン尿症治療薬「JNT-517」 P3試験開始 大塚製薬

 大塚製薬は19日、開発中のフェニルケトン尿症(PKU)の治療薬「JNT-517」(一般名:repinatrabit)について、グローバルP3(PheORD)試験を開始したと発表した。
 同試験では、PKU患者を対象に、repinatrabitを 1日2回経口投与し、その有効性、安全性および忍容性を評価する。米国では最初の患者登録が開始されており、今後、日本を含む複数の国で実施される予定である。
 同お化合物はPKUに対して、米国FDAからオーファンドラッグ指定および小児希少疾患医薬品指定を、欧州医薬品庁(EMA)からもオーファンドラッグ指定を受けている。また、EMAからは高フェニルアラニン血症に対する優先医薬品指定(PRIME:PRIority MEdicines)を受けている。
 フェニルケトン尿症(Phenylketonuria:PKU)は、常染色体劣性遺伝形式を示す遺伝性疾患である。先天性のアミノ酸代謝異常症で、フェニルアラニンという必須アミノ酸をチロシンに変換する酵素(フェニルアラニン水酸化酵素:PAH)の働きが生まれつき弱い、または補酵素(テトラヒドロビオプテリン:BH4)の生合成に関わる酵素に異常があるために発症する。
 この結果、血液中にフェニルアラニンが蓄積し、脳の発達や機能に悪影響を及ぼす疾患である。発生頻度は世界で年間約2万4000人に1人、米国では約1万人に1人と推定されている。食事中のタンパク質を制限してフェニルアラニン摂取を抑え、不足するタンパク質やビタミン、ミネラルを治療用ミルクで補う食事療法や、PAHやBH4を補う薬物療法が行われている。だが、これらの治療を行っても血中フェニルアラニン濃度を十分に管理できない場合があり、PKUに対するより有効な治療法の確立が望まれている。
 JNT-517(repinatrabit)は、2024年9月に大塚製薬の完全子会社となったジュナナ社が、独自の革新的な創薬アプローチであるRAPIDプラットフォームを利用して創製した開発中の経口低分子化合物で、腎臓におけるアミノ酸の再吸収を制御するタンパク質の機能を阻害する。
 P1b/2試験の中間解析データでは、疾患の重症度、既存治療への反応性に関わらず、少なくとも投薬後1週間から血中フェニルアラニン低下効果が観察されている。150mg群(1日2回、経口投与)では、投与2~4週間後の血中フェニルアラニンの平均値は投与前から約60%低下した(p=<0.0002 vs. placebo)。
 重篤な有害事象は観察されず、忍容性と安全性が確認されており、PKUに対するファースト・イン・クラスの薬剤になる可能性がある。

◆John KrausOPDC上級副社長兼医学責任者のコメント
 タンパク質摂取量を厳格に制限する食事療法や薬物治療を行っても、多くのPKU患者さんはフェニルアラニンの管理に課題を抱え続けており、実行機能障害、気分調節障害、その他の精神健康上の問題といった症状に直面している。
 また、食事制限に関する社会的孤立感や偏見など、社会的・情緒的な課題もある。我々は、世界中のPKU患者さんの未解決なニーズに取り組み、治療の画期的な進展に貢献すべく尽力していく。

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