
Edmund Wong 日本BD バイオサイエンス事業部長(右)
日本ベクトン・ディッキンソン(日本BD)は19日、千葉大学ヒト免疫疾患治療研究・開発センター(cCHID)、および千葉大学未来粘膜ワクチン研究開発シナジー拠点(cSIMVa)と、ヒト免疫機構の多様性に着目した詳細な解析、病態解明、治療法の開発、創薬の加速を目的に、「Science Connect Program」(SCP)を始動したと発表した。
本年12月4日付けで基本合意書を締結した同プログラムは、細胞レベルから遺伝子レベルに至るまで最先端の一細胞解析技術を実装するもので、SCPは日本BDが提供する産学連携促進プログラムである。同本プログラムの主な取り組みは次のとおり。
1、ヒト免疫の多様性を網羅的に解析するためのワークフロー標準化
2、先端技術を活用したフローサイトメトリーのコアファシリティ構築
3、国際水準の技術基盤をもとに新たな技術イノベーションの共創
新型コロナウイルス感染症などに対するワクチン開発や、高齢化に伴い増加するがんに対するがん免疫療法の進展など、予防から治療に至る幅広い領域において、免疫の重要性がますます注目されている。生体防御の要となる免疫系の細胞は全身に広く分布しており、脳疾患や心疾患といった多くの疾患において、免疫系の異常や炎症が病態に深く関与することも明らかになっている。
だが、免疫細胞の多様性や機能の全容は未解明の部分が多く残されている。同プログラムでは、最先端の一細胞解析技術を活用した一連のワークフローを確立することで、個々の免疫細胞からより詳細な情報を引き出し、さまざまな病態の理解に向けた新たな糸口を見出すことを目指す。
近年、これら一細胞解析技術は著しく進歩し、最新のフローサイトメーターは、これまで両立が難しかった「細胞画像の取得」と「高速な細胞解析・分離」を同時に実現している。装置の高性能化とともに自動化も進み、操作性も大きく向上したが、その性能を最大限に引き出すためには、欧米の先進研究機関と同様に、専門知識を持つスタッフによる「Shared Resource Laboratory(読み:シェアード リソース ラボラトリー)」(SRL)の整備が不可欠となる。
同プログラムでは、これら先端技術を活用しヒト免疫疾患の解明を加速する人材を育成し、研究力強化に繋げる環境の整備を産学連携体制により進める。
さらに、ヒトの免疫疾患の解明には、系統管理されたマウスモデルとは異なり、個人間においても多様性の考慮が不可欠である。このような免疫の多様性は、ワクチン接種の効果や副反応などの個人差にも関与していると考えられている。同プログラムでは、診療科横断的に共通の指標で免疫パラメーターを解析することで、多様な疾患に関わる免疫系の共通点や、疾患特異的な特徴の抽出が可能になると期待される。
今後、同プログラムの推進により、日本BDが提供する最先端の一細胞解析技術と、cCHIDおよびcSIMVaが有するヒト免疫病態研究に関する豊富な知見および検体を融合し、ヒト免疫機構の網羅的解析と多様性の俯瞰を可能にするビッグデータの取得、さらに、AI技術を活用したデータサイエンスとの連携により、世界トップレベルの研究体制とSRLを構築し、ヒト免疫疾患の解明と治療法の開発に貢献していく。


