2025年度通期予想上方修正で再建への手応え 有利子負債残高も半期で425億円減少 住友ファーマ木村徹社長

 住友ファーマの木村徹社長は10月31日、2025年度第2四半期決算説明会で会見し、コア営業利益、当期利益ともに過去最高益を見込んだ通期業績予想の上方修正について、「まだまだ安心する状態ではないものの、我々の取り組みが数字になって現れてきたとことは喜んでいる」と明言。その上で、「我々の会社はまだ再建途上にあるので、規律ある経費の使い方をしながらさらなる上を狙っていきたい」と抱負を述べた。また、有利子負債残高が「2025年3月の3054億円から2025年9月には2629億円となり、425億円減少した」ことも報告した。
 2025年度第2四半期の好業績に大きく寄与した北米の基幹製品であるオルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤)とジェムテサ(過活動膀胱治療剤)については、「オルゴビクスは経口剤としての良さ、薬の効果・安全性を自負している」と強調。ジェムテサも「各ベイヤーと価格維持交渉をしたもののニーズが高く、過去最高の売上を記録した」と説明した。
 マイフェンブリー(子宮筋腫・子宮内膜症治療剤)も、「本年1月のファイザーとの共同販売提携解消と住友ファーマアメリカの効率化により、合計してこれまでの1/3の営業力で工夫しながら進めている」と断言。その上で、「売上を維持しながら経費削減により単品で大きく黒字を計上する事業に変革できた」とポジティブに評価した。
 木村氏は、国内の営業体制にも言及。「昨年12月より7支店エリア制を導入した」と振り返り、「その後、セブリオン(統合失調症)、オゼンピック(2型糖尿病GLP-1受容体作動薬、注射剤)、ウゴービ(肥満症、GLP-1受容体作動薬、注射剤)の共同販売製品が導入できた」と報告。
 これに伴い「本年10月から2営業部CNS領域、5営業部糖尿病領域・希少疾患領域の各領域に特化した従来の組織に戻した。今後は、より強い専門性の高い営業力で、これらの製品のプロモーションを進めていく」考えを訴求した。
 8月5日に京大の医師主導治験データに基づいてPMDAに承認申請した他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞(パーキンソン病)についても、「今年度内の承認取得ということで、承認取得後の販売体制準備も進めている」と明かした。
 住友ファーマの2025年度第2四半期業績(コアベース)は、売上収益2271億円(前年同期比25.7%増)、コア営業利益961億円(前年同期は81億の赤字)、営業利益962億円(同82億円の赤字)、親会社の所有者に帰属する当期利益989億円(同322億円の赤字)となった。
 売上収益は、オルゴビクスが対前年同期比94.7%増の691億円、ジェムテサが同71.9%増の434億円と大きく寄与した。利益面は、アジア事業の一部譲渡益(490億円)が大幅増益を後押しした。
 2025年度業績予想(コアベース)は、5月13日の予想を上方修正し、売上収益4290億円(従来予想比740億円増)、コア営業利益970億円(410億円増)、営業利益980億円(440億円増)、親会社の所有者に帰属する当期利益9200億円(520億円増)を見込んでいる。
 上方修正は、オルゴビクスなど基幹製品の好調な製品販売や、アジア事業の譲渡益が想定を上回ったこと等によるもの。コア営業利益、当期利益ともに上半期は過去最高を記録し、年間ベースでも過去最高となる見込み。
 上半期の好業績に伴い、有利子負債残高も2025年3月の3054億円から、2025年9月には2629億円と425億円減少した。木村氏は、「住友化学の財務保証の解消」を大きな目標として掲げており、「我々の状況は良くなっているが、実際にこれをどのように解消するかは親会社、金融機関とこれから相談していく。その下地は整った」とコメントした。
 北米の基幹製品であるマイフェンブリーについて木村氏は、「これまでは実際の売上以上の営業力を投入していた。本剤の製品力を鑑みると拡大ではなく効率的に維持するところに重きを置いた方が良いと思う」との考えを示した。さらに、「マイフェンブリーとジェムテサの両剤を扱うレップを導入して、販売効率を高める工夫もしている」と訴えかけた。中川勉住友ファーマアメリカPresident and CEOも、「販売するドクターのターゲットを絞ったり、地域的にも集約したところを狙って最大の効果を得るように工夫している」と補足した上で、「今、一定の売り上げ目標を達成出来ているところもある。これらを踏まえて次の戦略を考え、今以上に伸びるように努力して行きたい」と語った。
 木村氏は、他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞の営業戦略にも言及し、まず、「承認は、おそらく条件付き承認となり、適正使用ガイドラインが付いてくるだろう」と予測した。そうなれば「実際に移植できる病院や患者数も当面は非常に制限されるので、ラクセラ(住友化学との再生・細胞医薬事業合弁会社)の営業部隊を中心に、住友ファーマの営業部隊(CNS領域)が連携していく」構想を明かした。
 MFN(米国の薬価を最も薬価の低い国の水準にまで引き下げる最恵国待遇策)については、「詳細は決まっていないが色々なケースを想定しており、当社の屋台骨を揺らぐ事態にはならないものと考えている」と話した。
    

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