エーザイは3日、早期アルツハイマー病治療剤「レカネマブ」について、オーストラリア医療製品管理局(TGA)が承認しないとした初期審査結果を確認したと発表した。
2024年10月、TGAはレカネマブを早期ADに対する治療薬として承認しないとする初期の審査結果を公表し、エーザイは同年12月に英国医薬品医療製品規制庁(MHRA)と欧州医薬品庁(EMA)により合意されたものと同じアポリポタンパク質E4(ApoE4)非保有者およびヘテロ接合体保有者を対象とした適応症をTGAに提案し、再審議の申請を行った。
再審議の過程でTGAは、「ApoE4対立遺伝子の増加はARIAの潜在的な危険因子であり、ApoE4ヘテロ接合体保有者に対する安全性は十分に確立されていることには同意できない」との理由で、ApoE4非保有者のみに限定した適応症を提案した。
これに対して、エーザイは、代替の適応案を提案し、その一つとしては、「ApoE4非保有者に加え、専門施設においてADの治療とARIAのモニタリングに関する専門知識を有する医師の監督下で治療を受けることを条件に、ApoE4ヘテロ接合体保有者についても適応症に含めるべき」と提案したが、TGAは同提案を却下した。
オーストラリアでは、2023年に認知症当事者数は約41.1万人と推定され、2058年には約84.9万人に増加すると報告されている。ADは認知症の最も一般的な原因とされ、通常、認知症全体の60~70%を占めるとされている。
ADは、時間の経過とともに段階的に病期が進行し重症度が増していく疾患であり、病期の進行に伴いAD当事者や介護者の人々に大きな障害や負担をもたらすだけでなく、社会全体に対しても甚大な影響を及ぼす。より早期の段階からADの進行を遅らせる新しい治療オプションに対する大きなアンメット・ニーズが存在する。
◆Lynn Kramerエーザイチーフクリニカルオフィサー(M.D.)のコメント
TGAの今回の決定に大変驚き失望している。レカネマブが世界の11の国と地域で承認されていることに鑑み、オーストラリアのアルツハイマー病コミュニティにはとても落胆を持って受け止められている。
我々は、申請データを適切に反映する適応症についてTGAと妥協点を見出そうとに努力したが、残念ながら合意には至らなかった。TGAが提案したApoE4非保有者のみに限定する適応症では、潜在的な対象当事者様の約3分の2(~70%)の方々が、疾患の進行を遅らせる可能性のある治療薬へのアクセスを否定されることになる。
我々は、ApoE4ヘテロ接合体保有者とApoE4非保有者集団とのベネフィット/リスクプロファイルの類似性を考慮すると、少なくともApoE4ヘテロ接合体保有者はレカネマブ治療にアクセスできるべきであると考えている。
TGAが提案する適応症は、患者中心の考えに反するものであり、我々はこれを受け入れることはできない。今回の結果により、オーストラリアのAD当事者が、疾患の根本原因を標的とし、早期ADの進行を遅らせる治療オプションに公平にアクセスできなくなることを、我々は深く憂慮している。
エーザイは、オーストラリアにおられる適格な早期AD当事者様がレカネマブにアクセスできるよう、行政審査裁判所による審査を求める可能性も含めたあらゆる対応を検討している。