自宅からも参加可能な治験アプリ「Unify」本格始動 アストラゼネカ

分散型臨床試験の統合的なソリューションを実現、ドラッグラグ・ロス解消の一助に

 アストラゼネカは26日、分散型臨床試験(DCT)に有用な自宅からも参加可能な新しい治験アプリ「Unify(ユニファイ)」を本格始動したと発表した。
 同アプリにより、「スマートフォンと検査機器の連携による治験データの測定」、「バーチャル来院」、「治験薬の患者への直接配送」などが可能となる。
 Unifyの導入により、患者の治験参加に対する負担や障壁が下がり、さらに、製薬会社の新薬開発までの時間とコスト削減が期待できる。アストラゼネカは、健康の公平性を目指し、治験にアクセスしやすい社会実現に向け、DCTの確立に注力している。
 現在、欧米で承認されている新薬の約6割が日本において未承認といわれ、ドラッグラグ・ロスによって将来最新の医薬品や医療技術を使った治療を日本で受けることができない可能性が懸念される。
 ドラッグラグ・ロス問題の解決策の1つとして、日本の国際共同治験参加が重要であるとと指摘されている。また、デジタル化が進み、治験の加速や効率化、さらには多様な被験者を取り入れる「Diversity in Clinical Trials」の観点からも、世界でDCTが拡大している。
 日本が今後国際共同治験へ参加し続け、革新的な医薬品を継続的に使用できるようにするには、DCT の普及が重要になる。DCT を実現するUnifyは、アストラゼネカ英国本社(AstraZeneca PLC)が独自開発し、2025年1月末現在54 か国以上、93 言語に対応、統合的な治験ソリューションを提供する治験アプリだ。
 2023年11月AstraZeneca PLCの完全子会社として設立した Evinova社(本社:スイス)が、現在 Unify をアストラゼネカ以外の製薬企業、バイオテック、医薬品開発業務受託機関(CRO)などにも提供している。
 Unifyは、患者の来院数の軽減、治験実施医療機関から遠方の患者、仕事をもつ患者の治験参加の障壁の緩和、治験実施医療機関は患者さんの健康状態に関する情報をリアルタイムで収集することで有害事象等が発生した場合にもより迅速な対応が可能など、多くの利点を患者に提供している。
 今回、新たに日本国内で患者の活用が開始された Unifyの主な機能は、次の通り。

・患者自身のスマートフォンと検査機器(体重計やパルスオキシメーターなど)を連携させ、測定データを自宅からリアルタイムで治験実施医療機関へ送信

・治験を実施する医療従事者が遠隔で患者と顔を合わせて問診し、患者の健康状態を把握(バーチャル来院)

・従来型の治験では患者さんが定期的に治験実施医療機関を訪れて受領していた治験薬を、患者の自宅へ直接配送(ホームサプライ)
 さらに、AstraZeneca PLC が Unify を活用して実施した慢性閉塞性肺疾患(COPD)を対象とした国際共同治験 CRESCENDO 試験では、試験実施計画書上、従来の方法と比較すると次の効果が期待される。

・患者登録数の減少: 効率的なデータ収集と高品質なデータにより、必要なサンプルサイズを減少

・治療期間の約 50%短縮

・ 対面訪問の約 50%減少

・ 患者の負担軽減: バーチャル訪問と自宅でのデータ収集が可能になり、患者の負担が軽減

・全体試験期間の約 15%短縮: 効率的なデータ収集と処理により短縮

・コストの約 32%削減: デジタルソリューションにより、運営コストが削減

 2025年1月末現在、Unify は国立がん研究センター 中央病院をはじめ、国内の26の治験実施医療機関で導入され、各治験のプロトコールに準じ患者さんへの使用が開始されている。
 DCTの普及は、より患者が参加しやすい治験を実現し、ドラッグラグ・ロス解消の糸口になると期待される。アストラゼネカは、今後もより多くの医療機関や患者に Unifyを活用して貰うことで、DCT を社会に実装し、治験のより効率的な運用を通じて、ドラッグラグ・ロス解消に貢献していく。

◆眞島喜幸特定非営利活動法人パンキャンジャパン理事長、日本希少がん患者会ネットワーク理事のコメント
 がんの中で10~15%を占める希少がんは治療薬が少なく予後が悪いため、患者は新薬の開発、承認を切に望んでいる。治験への参加希望は高い一方で、治験施設が身近になく、参加できない患者が全国に大勢いる。
 そのためUnifyによるDCTの普及は希望の光である。新薬が日本で使えるようになるまでの間に亡くなってしまうようなケースも多々あるため、このようなソリューションがドラッグラグ・ロス解消の一助となり、1日でも早く必要な患者に薬が届くことを期待する。

◆大津智子アストラゼネカ取締役研究開発本部長のコメント
 アストラゼネカの治験数は国内最多を誇り、9割以上が国際共同治験である。それにより諸外国と変わらないタイミングで日本の患者さんに新薬をお届けしている。
 治験アプリUnifyという具体的なソリューションで、日本での DCT を加速させ、これまで治験参加に障壁があった患者さんが参加しやすい環境を創り、アストラゼネカの革新的な医薬品を一日でも早く患者さんに届けていきたいと考えている。

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