過敏性腸症候群有症状者のセルフマネジメントに効果的なeHealthシステム開発 早稲田大学

IBSなど慢性疾患のセルフマネジメントへの応用に期待

 早稲田大学人間科学学術院の田山淳教授、埼玉県立大学の濱口豊太教授らの研究グループは15日、過敏性腸症候群(IBS)有症状者を対象とした効果的なeHealthシステムの開発に成功したと発表した。eHealthシステムを利用したセルフマネジメントプログラムにより、IBS症状の重症度を減少させることに成功し、IBS患者がその症状と長期間上手に付き合っていくためのセルフマネジメント法としてのeHealthプログラムの効果を明らかにしたもの。
 具体的には、IBS有症状者を対象としたeHealthシステムを用いた8週間のセルフマネジメントプログラムにより、IBS関連マーカーが有意に軽減し、主要な結果として、「IBS重症度スコア」の顕著な改善が見られるとともに、門レベルの腸内細菌であるシアノバクテリア(cyanobacteria)の減少が認められた。

点数が低いほど症状が軽いため、eHealth実施群は介入後に改善を示している。

 今回開発されたeHealthプログラムは、IBS以外の慢性疾患のセルフマネジメントへの応用にも期待できる。これらの研究成果は、Scientific Reportsに、1月3日掲載された。
 田山氏らの研究グループは、まず、既にランダム化比較試験でIBS症状の軽減に寄与することが明らかになっているIBSのセルフヘルプガイドブックを日本語に翻訳し、章立て、内容等をeHealthコンテンツ用に加除修正し、eHealthシステムを構築した。
 研究では、このeHealthベースのセルフマネジメントプログラムが、IBSの重症度を軽減できるという仮説検証を目的とした。eHealth群(n=21)と、eHealth未実施群(n=19)を比較する無盲検単純無作為化比較試験を行い、eHealth群は、8週間、コンピュータとモバイルデバイスでセルフマネジメントコンテンツに無制限にアクセスすることができた。
 主要アウトカムは、IBS重症度評価表(IBS-SI)、副次的アウトカムはQOL、腸内細菌、脳波とし、ベースライン時と8週目に各測定を実施した。
 その結果、eHealthによって主要アウトカムであるIBSの重症度が軽減することが明らかになった。さらに、副次的アウトカムに関しては、脳波は変化がなかったものの、QOLの上昇、門レベルの腸内細菌であるCyanobacteriaの減少が認められた。従って、eHealthベースのセルフマネジメントプログラムにより、IBS症状の重症度を減少させることに成功した。
 IBSは慢性疾患で、その症状改善には長い期間を要することが知られている。同研究では、慢性疾患のうちIBSのみをターゲットとして、彼ら自身が症状と長期間上手に付き合っていくためのセルフマネジメント法としてのeHealthプログラムの効果を明らかにした。
 IBS症状を自助努力によってコントロールできることが同研究によって示されたため、IBS以外の慢性疾患のセルフマネジメントに対しても、eHealthプログラムが応用できる可能性がある。

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