本年も、塩野義製薬名誉顧問である塩野元三薬祖講講長を筆頭に、祭典委員長を片山化学工業代表取締役社長片山秀樹様、副祭典委員長を昭和化工代表取締役社長小椋浩之介様にお願いし、賑々しく神農祭を斎行申し上げます。
今回、改めまして日本の医薬総鎮守として医薬業界から尊崇される当神社の歴史と神農祭について簡単にご説明させていただきます。
少彦名神社は、1780(安永9)年に、薬種中買仲間で組織する伊勢講が、京都の五条天神宮から日本の薬祖神である少彦名命の分霊を仲間会所に勧請し、中国の薬祖神である神農氏と共に合わせ祀ったのが始まりとされています。
道修町の薬種中買仲間は1722(享保7)年以降、江戸時代を通して、唐薬、和薬の集荷と販売を一元的に担った組合組織である。その少彦名神社は組織の信仰の要であるだけでなく、組合の会所が置かれ、経済活動の中心でもありました。
株仲間は124と少数でしたが、1791(寛政3)年に結成され、別家や分家が加入する神農講の人々を仲間の内として結束を図っていきました。昨年8月には、薬種中買仲間市場公認300年祭が執り行われました。
1873年(明治6)年には、新政府の方針で株仲間は解散しましたが、組合組織は薬種商組合として再生し、近代化を図った薬種商組合が、少彦名神社の維持運営にあたる講組織を改めて組織化したのが現在の薬祖講です。薬祖講は、道修町に根ざした薬種商たちの精神的な支柱、信仰上の核として、少彦名神社を新たに位置づける機能を果たしました。
「薬祖講」は江戸時代から行われていた伊勢講を基盤とし、1884(明治17)年に結成されたもので、講員から5~6人を選出し、世話・出納係とし、神農祭の次第を定めています。現在は薬業関係者約350社が会社単位で薬祖講に加入し、神農祭と冬至祭に体現される独自の講行事を行っています。
神農祭は、薬祖神に対する祭礼であり、少彦名神社を支える薬祖講にとって最も重要な行事となります。1872年(明治5)年までは9月、10日に行われていましたが新暦の移行や、コレラの流行による祭礼延期の影響もあり、変動の後、1877年(明治10))年には11月22、23日の実施となり現在に至っています。
薬祖講は、このほかに、かつて株仲間の行事交代の場であった冬至祭を12月22日に行っており、神農祭のお礼祭りとも別称されています。
社伝によれば神農祭は、1822年(文政5)年に大坂でコレラが流行した時、薬種仲間が疫病除けの薬として「虎頭殺鬼雄黄圓」という丸薬をつくり、合わせて「神虎」のお守りもつくって神前祈願の後、施与したことに由来するそうで、200年以上の歴史があります。
厄除けのお守りとして五葉笹に付けた張り子の「神虎」が授与されますが、神農祭の当日、道修町の東西の通りは、くす玉飾りや献灯辻提灯などで飾られる、戦前には通りに面する各商店に祭礼提灯・祝い幕・金屏風などが賑やかに飾られ、お得意様を接待したようです。
現在、神農祭は、薬祖講の講員からなる祭典委員会が中心となって運営しています。祭典委員会は委員長1人、副委員長1人、委員18人からなり、委員長と副委員長は薬祖講の評議員薬40人の中から選出され、18人の委員は薬祖講に加入している会社の総務関係の管理職から選出されます。薬祖講はこのほかに、かつて株仲間の行事交代の場でもありました。
毎年祭礼を実行する祭典正副委員長、委員は日本の古から村々で行われてきた「当屋、頭屋、年番神主」といわれるある種特定の家が務める制度を現在でもこの都会の真ん中で行われていることが珍しく2007(平成19)年4月に大阪市無形文化財に指定されています。
近年は、神農祭と合わせたセルフメディケーション啓発活動への取り組みも盛んとなり、参拝者も5万人を超えています。また、医師・薬剤師国家試験および医学部・薬学部合格祈願の奉納絵馬は全国から6000枚を超え、当神社の崇敬を物語るものとなっています。
ここ数年はコロナ禍の影響で、道修町に並ぶ露天の自粛や、大阪家庭薬協会の「くすりのゆるきゃらパレード」などのイベントの中止も余儀なくされていましたが、昨年の神農祭からはそれぞれ復活し、今年も例年通りに行われる予定です。露店も昨年から復活しており、今年の神農祭もかつての賑わいをみせるでしょう。
また、本宮の23日には、森下竜一大阪大学大学院医学系研究科寄附講座教授を講師に迎え、大阪・道修町の神農祭市民公開講座が開催されます。今年は、「2050年の未来医療と2025大阪・関西万博」をテーマに無観客で開催し、後日、医薬通信社のご協力を得てYouTube配信致します。
2050年の未来医療では、遺伝子治療の現況と展望についての講演されます。2025大阪・関西万博の進捗状況も気になるところですが、2025年日本国際博覧会大阪ヘルスケアパビリオン総合プロデューサーを務められている森下先生から的確なお話しが聞けるでしょう。
23日は、阪神タイガースとオリックスバファローズの優勝パレードが御堂筋で開催されます。優勝パレードは、御堂筋の淀屋橋から心斎橋までの約1.7kmがルートとなっており、開始時間はオリックス・バファローズが午前11時、阪神タイガースが午後2時からです。虎の笹を象徴としております当社と阪神タイガースとは何か大きなご縁を感じます。両チームの優勝パレード時には、是非、当社にもご参拝頂ければ幸いです。
コロナによる行動制限の解除やマスクの着用も個人の判断と緩和されていはいますが、祭典委員会で策定しています「神農祭 新型コロナウイルス対策ガイドライン」を遵守しながら、お祭りを斎行することになります。薬業界の皆様には、疫病退散とともに「張り子の虎」をお受けいただきたくお願い申し上げます。