武田薬品は8日、デング熱ワクチン「QDENGA(4価弱毒生デング熱ワクチン」について、欧州委員会(EC)により、欧州連合(EU)での4種すべてのデングウイルス血清型により引き起こされるデング熱の予防を目的に、4歳以上を接種対象者として承認されたと発表した。
QDENGAは、当局の推奨に従って使用することが必要である。同承認は、2022年10月に欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品評価委員会(CHMP)からの肯定的な見解を受けて遂行されたもの。
デング熱の世界的な発生率は過去20年間で8倍上昇しており、気候変動と都市化により上昇し続けている。現在、125を超える国々で世界人口の約半数が感染の危険にさらされており、熱帯地域に位置する欧州の海外領域のほとんども流行地域に含まれている。
これらの要因により、フランス、イタリア、ドイツ、スペインなどのヨーロッパ大陸の非流行地域での局地的な流行が発生している。デング熱は流行国から欧州に帰国する旅行者の発熱の主たる原因であり、欧州の旅行者におけるデング熱の発生率は一般に過小評価される傾向にある。
毎年休日に流行地域に住む友人や家族を訪問する欧州からの2600万人を超える人々が、デング熱の脅威にさらされている。
欧州委員会の承認は、28,000人以上の小児および成人を対象にした19件の臨床第1、2、3相試験にわたる結果によって裏付けられている。これには、グローバルP3試験(TIDES試験:Tetravalent Immunization against Dengue Efficacy Study)の4.5年の追跡調査データが含まれている。TIDES試験では、ワクチン接種から12ヵ月後に症候性デング熱症例の80.2%が予防されたことにより、全般的なワクチン有効性(VE)という主要評価項目が達成された。
さらに、TAK-003は、ワクチン接種18ヵ月後の入院の90.4%予防などの主要な副次評価項目も達成した。有効性は血清型により異なり、このTIDESの探索的解析により、4.5年の追跡調査期間を通して、TAK-003がワクチン接種前の血清反応が陽性の被験者群(血清反応陽性群)と陰性の被験者群(血清反応陰性群)の両方を含む、全体集団においてデング熱による入院の84%、デング熱の61%を予防したことが示された。
TAK-003の忍容性はおおむね良好であり、ワクチン接種者における疾患増強のエビデンスはなく、現在までに重要な安全性リスクは特定されていない。
QDENGAは、インドネシア国家医薬品食品管理庁(Badan Pengawas Obat dan Makanan:BPOM)により、4種すべてのデングウイルス血清型により引き起こされるデング熱の予防を目的に、6歳から45歳を接種対象として承認された。武田薬品は、アジア諸国およびラテンアメリカの他のデング熱流行国においても規制当局への申請を継続して進めている。
なお、今回の欧州委員会の承認が、同社の2023年3月期(2022年度)の通期の連結業績予想に及ぼす影響はない。
◆Gary Dubin武田薬品グローバル ワクチン ビジネス ユニット プレジデントのコメント
人々の移動が容易になっている現代において、世界ははるかに小さくなり、デング熱流行地域に住んでいる人々やその地域に旅行する人々にとって、デング熱のリスクが高まっている。
欧州委員会の承認は、QDENGAにとって重要な転換点であり、デング熱の世界的な負荷を減らす私たちの願いの達成に一歩近づくことを示している。
私たちは、EUの多くの地域にQDENGAをお届けすることを光栄に思う。EU内に居住し世界中の流行地域に旅行する人々へのデング熱予防のための新たなツールとして医療従事者に提供することができる。
◆ドイツBerlin Centre for Travel and Tropical MedicineメディカルディレクターおよびCRM Centrum für Reisemedizin DusseldorfサイエンティフィックディレクターのTomas Jelinek博士のコメント
効果的なデング熱予防には多面的アプローチが必要であり、従来の方法ではさまざまな理由から不十分であった。近年、複数の欧州諸国で確認されたデング熱による局地的な流行の可能性や、デング熱流行国を訪問する欧州人旅行者など、罹患の危険にさらされる可能性のある人々が存在する。
医師として、幅広い患者集団に対して利用可能な新しいデング熱ワクチン接種ツールがあることは心強い。