フォシーガ P3相試験で心血管死・心不全悪化リスクを有意に抑制 アストラゼネカ

 アストラゼネカは5日、フォシーガについて、P3 相DELIVER試験において左室駆出率が軽度低下または保持された心不全患者の心血管死または心不全悪化のリスクを有意に抑制したと発表した。
 この結果は、スペインのバルセロナで開催された2022年欧州心臓病学会総会で発表され、New England Journal of Medicine にも掲載された。
 フォシーガは、心血管死または心不全悪化の複合アウトカムを 18%(中央値 2.3 年のフォローアップ期間においてダパグリフロジン群で16.4%、プラセボ群で19.5%)低下させた(p<0.001)。
 心血管死、心不全悪化それぞれが主要評価項目の優越性に寄与していた。この所見は、検討した主なサブグループで一貫しており、左室駆出率の状態にかかわらず幅広い心不全患者に対するフォシーガの効果の拡大が期待できる。
 試験結果では、カンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)の総症状スコアにより測定された患者報告アウトカムにおいて症状改善の効果も示された。米国心臓病学会、米国心臓協会、および米国心不全学会が共同で発行した心不全ガイドライン2022 年更新版では、左室駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)および左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)の治療薬としてフォシーガなどのナトリウム・グルコース共輸送体阻害剤(SGLT2)を推奨している。
 これは、左室駆出率低下を伴う心不全(HFrEF)におけるSGLT2阻害剤の使用を支持するこれまでの推奨を拡大するものだ。
 DELIVER試験は、エビデンスに基づく治療法が限られている入院歴のある患者、最近入院した患者、または左室駆出率が改善した患者といった対象も含め、この患者集団を対象としたこれまでの試験よりも幅広い組み入れ基準でデザインされた。
 これらの所見は、心不全において死亡率の有意な抑制を示した SGLT2 阻害剤の唯一のアウトカム試験であるDAPA-HF試験でこれまでに報告された結果を強化するものであり、左室駆出率にかかわらず心不全患者の基礎治療薬としてのフォシーガの使用を支持するさらなるエビデンスを提供するものだ。
 P3相DELIVER試験におけるフォシーガの安全性および忍容性プロファイルは、これまでに十分確立されているフォシーガの安全性プロファイルと一致した。

◆P3相DELIVER試験の主任治験責任医師を務めるScott Solomon 氏(ハーバード大学医学部およびブリガム・アンド・ウイメンズ病院内科学教授)のコメント
 ダパグリフロジンが全ての範囲の左室駆出率で有効であるため、すべての適切な心不全の患者さんの基礎治療薬として使用可能となることが期待される。
 従って、こうしたDELIVER試験の結果は、患者さんや臨床現場にとって重要なものである。これまでのHFpEFに関する他の臨床試験では、左室駆出率が高い場合に効果の減弱が示されたが、ダパグリフロジンを用いた本試験では、左室駆出率にかかわらず一貫した結果が得られた。
 この所見は、ガイドラインに基づく標準的治療の早期開始を推奨する最新の治療ガイドラインを補強するものでもあり、臨床現場でのSGLT2阻害剤のより広範な使用を支持できることが期待される。

◆Mene Pangalosアストラゼネカバイオファーマ研究開発部門担当エグゼクティブバイスプレジデントのコメント
 左室駆出率が40%を超える心不全患者さんは、治療が最も困難であり、利用できる治療選択肢もほとんどない。当社は、心不全の複雑性の理解を深めるDELIVER試験の画期的な結果を発表できることを誇りに思っている。
 これらのデータは、2型糖尿病、慢性腎臓病、および心不全の患者さんでフォシーガの心腎保護作用が認められた当社の過去の研究に基づくものである。

タイトルとURLをコピーしました