
住友ファーマの木村徹社長は2日、価値「創造」から価値「提供」への新たな成長戦略となる「Boost 2028-力強い住友ファーマの加速-」のオンライン説明会で会見し、「Boost 2028に掲げた目標達成を目指して財務規律を維持しつつ、再成長に向けた基盤を拡充していく」と力強く宣言した。木村氏は復配についても、「Boostの進捗も踏まえながら、早期に再開する」考えを示した。
Boost 2028は、2026~28年度における3カ年の成長戦略を策定したもので、「売上の更なる拡大」、「次世代成長エンジンの育成」、「がん2品目の方向性確定」、「財務基盤の強化」を柱とする。
具体的な数値目標として、「28年度にオルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤)、ジェムテサ(過活動膀胱治療剤)の2剤合計で売上高3500億円超」、「期間中ROE10%以上」、「自己資本比率を早期に50%超」、「26-28年度累計研究開発費1800億円超」を掲げている。
住友ファーマは、2023年度の大幅な業績悪化後、抜本的構造改革を断行し、2024年度の業績をV字回復させた。その後、昨年5月に公表した“Reboot 2027”での3年間の目標数値「基幹3製品売上高2500億円規模に拡大」、「コア営業利益250億円以上」、「フリーキャッシュフロー黒字維持」、「有利子負債残高2000億円以下」を2025年度1年間でほぼ達成する見込みにある。
その2025年度は、基幹3製品売上高2600億円、コア営業利益は過去最高益の1070億円(丸紅へのアジア事業売却関連収益を除けば430億円)、黒字維持470億円、有利子負債残高約2200億円(ネット・デット 約1900 億円)を見込んでいる。2025年には、アジア事業再編の初回株式譲渡手続きも完了し、「中国、アジアパシフィック事業を別会社にして、丸紅6割、住友ファーマ4割で丸紅主導で進む形に再編した」
こうした中、木村氏は「引き続き販売費及び一般管理費・研究開発費等の規律あるコストマネジメントを継続しながら、V字回復からの成長を加速させるべく、2026年度から2028年度までの成長戦略として“Boost 2028 を策定した」と説明する。
Boost 2028では主な取り組みとして、オルゴビクス・ジェムテサを中心とした注力製品について、臨床的有用性を積極的に訴求していくことで製品価値の最大化を図り、収益基盤をさらに強化する。オルゴビクスは、「米国の医療制度改定で急速に売上拡大したが、シェア拡大の余地は大きい。積極的なプロモーション活動を展開し、2030年代に2500億円を目指す」と強調する木村氏。ジェムテサは、「競合品のジェネリックの登場もあり、β3作動薬市場は今後も拡大する。臨床的有用性を訴求するための販売投資を行って2030年代に1500億円規模を達成する」
また、次世代の収益基盤の確立のため、エンゾメニブ(急性骨髄性白血病)、ヌビセルチブ(骨髄線維症)のがん2品目を最優先プログラムとしてリソースを集中させ、最速での上市を目指す。
両抗がん剤は、「基本的に他社との提携を軸とした開発の加速最大化を図る」とした上で、「とはいえ、単純なライセンスアウトではなく、我々が希望する開発・提携の契約ができないなら自社開発も辞さない」考えを示した。
再生・細胞は、「先日、アムシェプリ(非自己 iPS細胞由来パーキンソン病薬)の条件・期限付き承認が了承されたが、これを皮切りに、複数の革新的な治療製品上市を達成し、医療の“パラダイムシフト”を実現させる」。パーキンソン病、てんかん、てんかん周辺の希少疾患など期待の候補化合物を有するCNS領域は、「少数患者での有効性シグナルを検証しながら開発を推進し、2030年代前半までに複数品目の上市を目指す」。
感染症領域は、「自社TLR7アゴニストによるアジュバント技術を軸に、外部パートナーとの連携で新規ワクチンの創製による価値創造、新規事業の可能性を探る」開発中のユニバーサルインフルエンザワクチンは、ピーク売上高目標2000 億円を目標に掲げる。
木村氏は、6000万株を上限とした新株式発行による公募増資にも言及し、「2023年度における多額な損失計上から順調に業績回復している一方で、今後を見据えたさらなる成長に向けた経営体質及び財務体質の強化を目的としたものである」と説明。その上で、「本日付で新株式発行に係る発行登録書を関東財務局に提出した」と報告した。
なお、Boost2028は、2026年度から2028年度の主な取組にフォーカスした内容であり、包括的な中期経営計画策については、「二つの抗がん剤の提携の方向が定まった時に策定する」と明言。その時期を「26年末から27年初めに掛けてのタイミングになるだろう」と予測した。
