
武田薬品は5日、三菱倉庫および日本貨物鉄道(JR貨物)と国内で初めて大型の31フィート温度管理機能付きコンテナを医療用医薬品輸送に導入したと発表した。
同コンテナの導入は、武田薬品の医療用医薬品輸送における温室効果ガス排出量の更なる削減を目的としたもの。加えて輸送の一部をトラックから鉄道輸送へ切り替えるモーダルシフトでの輸送範囲を拡大した。
近年、物流業界では課題が顕在化している。環境負荷低減として、ネットゼロ社会の実現に向け、温室効果ガス排出量削減は喫緊の課題となっている。さらに、2024年問題への対応では、トラックドライバーの労働時間規制強化により、輸送力不足が懸念されている。また、サプライチェーン強化として、自然災害や緊急事態に備え、複数の輸送手段の確保が求められている。
こうした背景を踏まえ、武田薬品、三菱倉庫およびJR貨物は、鉄道による医薬品輸送に取り組みを2023年から開始している。
医薬品の鉄道輸送にあたっては、日本国内の鉄道輸送で主に使用されるサイズである12フィート温度管理機能付きコンテナを活用していたが、一層の輸送量拡大には、より大型の31フィート温度管理機能付きコンテナの導入が効率的であると判断した。
だが、31フィート温度管理機能付きコンテナは市場への流通本数が非常に少なく、安定供給の観点から専属使用での運用が必要であった為、医薬品輸送への導入に至っていなかった。
一方で31フィート温度管理機能付きコンテナは、内容積が10トントラックとほぼ同じことから輸送単位・荷役作業を変更することなくモーダルシフトを実現可能であり、農産品、工業製品、積合せ貨物等ですでに導入実績がある。
このため、武田薬品、三菱倉庫およびJR貨物は、31フィート温度管理機能付きコンテナが活用可能な輸送ルートと同コンテナ内の温度状況の検証を重ね、今回、医薬品の適正流通(GDP: Good Distribution Practice)ガイドラインに準拠した輸送が実施可能と判断し、輸送能力の増強の実現に至った。
武田薬品は、2040年までにバリューチェーン全体で温室効果ガス排出量ネットゼロを達成するというコミットメントの一環として、より環境に配慮した輸送方式の導入を検討してきた。
武田薬品の国内における医薬品鉄道幹線輸送については、2023年東北エリアでの鉄道への切り替えを皮切りに、2024年12月から2025年7月にかけて九州・四国・北陸・上越エリアに拡大してきた。
今回の31ftコンテナの導入により、2025年12月に九州エリア、2026年1月に東北エリアで、鉄道輸送の対象を拡大する。これにより、鉄道切替計画対象エリアの約6割(輸送重量比)で、鉄道輸送への切り替えが行われた。
幹線輸送分をトラックから鉄道に切り替え、その前後の輸送のみをトラック輸送とすることで、当該輸送における温室効果ガス排出量が現行比約58%減となる削減効果を見込んでいる。
また、鉄道、トラックの2つの幹線輸送手段が確立されたことで、どちらか一方の輸送手段に支障が生じた場合でも高品質な医薬品を安定的に輸送し続けることが可能となる。さらに、長距離トラック輸送の軽減により、物流の2024年問題にも大きく貢献していく。
なお、同輸送についても、2022年1月から運用開始した、三菱倉庫が開発したデータプラットフォーム「ML Chain」を用いた医薬品の流通過程における温度・位置情報の可視化に続き、同プラットフォームのスマートコントラクト機能を活用し、三菱倉庫が起用する運送等の外部委託業者の必要な許認可の取得状況や監査記録などを、荷主の武田薬品が確認できる体制を確立している。
武田薬品は、スコープ3の温室効果ガス排出量削減に向け、サプライヤー企業とともに様々な施策を推進している。三菱倉庫は、サステナビリティ経営の取り組みの一環として効率的な輸配送等の実施による気候変動対策と環境保護の取り組みを強化している。JR貨物では優れた環境特性を有する貨物鉄道輸送サービスを提供することで、温室効果ガス削減に貢献している。
今後も、武田薬品、三菱倉庫およびJR貨物は、東京から北海道エリアへの輸送の幹線輸送部分を鉄道輸送に切り替えるなど、鉄道輸送のエリアの拡大をさらに推進し、地球環境負荷低減に貢献していく。
◆松本行浩武田薬品のグロ―バル マニュファクチャリング&サプライ ジャパンヘッドのコメント
今回の取り組みは、三菱倉庫、JR貨物、武田薬品がそれぞれの強みを持ち寄った協働の成果である。ネットゼロの実現を目指す取り組みの一環として、物流効率の向上、環境負荷の低減、トータルコストの最適化を実現するため、複数メーカーによる共同配送の枠組みづくりを今後も推進していく。幹線部分の鉄道活用と前後工程の最適化により、環境負荷低減とレジリエンス強化を両立したよりサステナブルな医療用医薬品物流モデルを、業界全体で加速していきたい。
◆加藤栄一三菱倉庫常務執行役員のコメント
当社グループは、顧客のグローバルサプライチェーンにおける環境負荷の低減のため、保管・荷役・輸送のあらゆる場面で支援している。今回の31フィート温度管理機能付きコンテナの導入が医療用医薬品のモーダルシフトに大きな貢献ができたことを大変うれしく思う。将来的には、複数メーカーの医薬品を共同配送する仕組みを構築し、サステナブルな医療用医薬品物流モデルの確立を目指す。
◆麦谷泰秀JR貨物執行役員鉄道ロジスティクス本部営業部長のコメント
31フィートコンテナ導入と鉄道へのモーダルシフト推進に感謝を申し上げるとともに、貨物鉄道輸送がサステナブルな医療用医薬品物流の構築に貢献できることを大変光栄に思う。本取組を通じて、国内医薬品輸送における、環境に優しい、持続的なサプライチェーンの構築に今後も貢献できるように尽力したい。
