EY Taxと固定資産データ入力作業効率化および資修判定業務自動化ソリューション開発 武田薬品

 武田薬品は11日、EY税理士法人(EY Tax、東京都)とファイナンス領域における固定資産データ入力作業の効率化と専門知識を要する資修判定業務の自動化を共同で実施したと発表した。
 近年、企業の会計・税務分野においては、専門的知見を要する判断業務やデータ入力などの煩雑な手作業により、業務効率化および人材不足への対応が喫緊の課題となっている。
 こうした中、武田薬品とEY Taxは、AI技術を活用した業務プロセスの高度化および標準化を推進すべく、固定資産業務における自動化ソリューションを共同開発した。
 同取り組みは、固定資産業務において必要となる見積書のデータ入力作業を人工知能を活用した光学式文字読み取り(AI OCR)により自動化し、さらに会計・税務の専門知識が求められる資修判定業務を機械学習AIの活用によって自動化することで、ファイナンス業務の迅速化・正確性の実現と生産性の向上を目指す。
 具体的には、AI OCRを活用することで、外部サプライヤー企業から送付されるPDFや紙媒体など、形式や表記方法が多様な見積書の手作業によるExcel転記作業を自動化し、これまで年間約1000時間超を要していた工数の大幅な削減を見込んでいる。
 さらに、転記後のプロセスにおいては、機械学習AIが過去の実績データを学習し、資修判定に加えて、会計処理に必要な適切な資産クラスの選定および法定耐用年数(例:建物付属設備15年、機械装置7~15年)なども自動で判定・提案する。
 資修判定において特に資本的支出として資産計上する場合は、投資家や経営層に対する適切な財務諸表情報の開示、減価償却費用の正確な算定および費用の適切な期間配分を実現するため、正確な会計処理が重要である。
 長年にわたり蓄積してきた会計や税務処理の知見をAIに学習させることで、属人化しがちな知識やスキルをモデル化し、業務水準の標準化と効率化実現を目指す。
 武田薬品とEY Tax間のAI OCRと機械学習AIを組み合わせた固定資産業務自動化ソリューションに関する共同開発は、2025年5月から開始された。武田薬品は、業務要件の提示、機械学習用データの提供、AI OCRを組み合わせた自動化ワークフローの設計・開発、AIモデルの評価・フィードバック、実運用への展開および体制構築を担当。
 EY Taxは、武田薬品からの要件を受けて、機械学習用データの作成、機械学習モデルの開発、精度検証・改善、PoC(概念実証)の実施、ならびに開発したモデルの運用環境への移行を担った。
 2025年10月以降は、武田薬品のデジタル人材が実運用を通じてAIモデルに継続的なフィードバックを行い、精度向上を図っている。AI OCRについては2025年11月より本格導入を開始しており、機械学習AIについては2025年11月よりパイロット導入し、2026年4月の本格導入を予定している。
 将来的には、日本国内にとどまらず、海外拠点への当該ソリューションの展開も視野に入れており、グローバル全体の固定資産業務の迅速化・正確性の実現と生産性向上への貢献を目指している。
 武田薬品は、データおよびデジタル領域の専門人材の育成に努めており、デジタルの活用には、経営陣自らが率先して取り組むと同時に、従業員にデータ&デジタルのリスキリングやアップスキリングの機会を提供している。管理部門においてもデジタル変革を実践し、革新的なファイナンス・購買・人事のデジタルソリューションを社内各部門に提供し、データのさらなる活用力とデジタル化を推進する。

◆図師康剛武田薬品TBSファイナンスソリューションズ ジャパンヘッドアンドジャパンサイトリードのコメント
 当社では、すべての患者さんのために、ともに働く仲間のために、いのちを育む地球のために、データとデジタルの力で、イノベーションを起こすことを企業理念に掲げている。
 この理念のもと先進事例から学ぶとともに、あらゆる業務プロセスでAI活用の可能性を探求している中、固定資産の会計や税務処理業務において機会を創出、先進的な取り組みを実践した。
 本取り組みが当社だけでなく、日本社会全体の課題である、特定のスキルを持った人手不足をデータ・デジタル&テクノロジーの活用によって解消する一助になればと考える。

◆上田理恵子EY Taxのタックス・テクノロジー・アンド・トランスフォーメーションリーダーのコメント
 本取り組みは、日本発の先進的なデジタルソリューションをEnd to Endプロセス全体に適用する取り組みである。将来的に海外でも展開できれば、武田薬品のようなグローバル企業ならではの企業価値の最大化に貢献が可能である。
 専門人材の確保や育成が経理・財務・税務部門の課題といわれる今、本取り組みは課題解決を後押しする革新的な取り組みである。

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