J&Jは8日、ライブリバント(一般名:アミバンタマブ)とラズクルーズ(同:ラゼルチニブ)の併用療法について、P3相MARIPOSA試験においてEGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺がんのアジア人集団の全生存期間(OS)で統計的に有意な改善を達成したと発表した。
オシメルチニブ単剤と直接比較したデータから、上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)遺伝子エクソン19欠失又はL858R置換変異を有する局所進行又は転移性の非小細胞肺癌(non-small cell lung cancer: NSCLC)のアジア人集団の一次治療において、アミバンタマブとラゼルチニブ併用療法は統計学的に有意なOSの改善が示された。
この化学療法非併用療法レジメンのOS(中央値)は4年以上に達し、オシメルチニブ単剤と比較して1年以上上回る見込みである。これらの試験結果は、2025年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)アジア会議で発表された。
アジアは世界で最もEGFR遺伝子変異を有するNSCLC患者が多い地域であり、その頻度は欧米の10~15%に対し30~40%と推定されている。治療の進歩にもかかわらず、約30%の患者さんは二次治療に到達できておらず、最初の治療選択が極めて重要である。診断後の5年生存率は20%未満にとどまる。
MARIPOSA試験で自らをアジア人と特定した501人の被験者から得られた結果によると、追跡調査期間中央値38.7カ月に基づき、アミバンタマブとラゼルチニブ併用療法群は、オシメルチニブ群と比較して死亡リスクが26%低いことが示された(ハザード比0.74、95%信頼区間:0.56-0.97、名目上のP値=0.026)。
OS中央値は、オシメルチニブで38.4カ月(95%信頼区間:35.1カ月、未到達)だったのに対し、併用療法では未到達であった。生存期間はアミバンタマブとラゼルチニブの併用療法により、OSの中央値がオシメルチニブで達成された値よりも1年以上延長する可能性が示唆されている。
3年時点での生存率は、併用療法群が61%であったのに対し、オシメルチニブ群は53%であった。OSの延長は42カ月時点でも維持され、生存率はそれぞれ59%及び46%であり、一次治療におけるアミバンタマブとラゼルチニブ併用療法による生存期間の延長は持続することが示された。
◆治験責任医師の林秀敏氏(近畿大学医学部内科学教室腫瘍内科部門教授)のコメント
アミバンタマブとラゼルチニブの併用療法は、オシメルチニブ単剤と比べて死亡リスクを約26%低下させ、従来の治療で得られてきた生存期間を上回る延命が期待される。EGFR遺伝子変異の多いアジアの患者さんにとって、本結果はこの併用療法が一次治療の標準を引き上げる重要な選択肢であることを示している。
◆長谷川一男NPO法人肺がん患者の会ワンステップ理事長のコメント
これらの結果は、EGFR遺伝子変異を有する肺がん患者にとって、治療の進展が着実に起きていることを明確に示している。この病気が特に多いアジアの患者さんやご家族にとって、かつては考えられなかったほど生存が延びている姿は、新たな希望をもたらす。
◆Anthony Elgamal Johnson & Johnson Innovative Medicine Asia Pacific 腫瘍領域 バイスプレジデントのコメント
我々は、肺がんの根本的な生態に取り組むことで、肺がんの経過を変えることに取り組んでいる。アミバンタマブとラゼルチニブの併用療法は、EGFRとMETを標的としつつ免疫細胞も活性化することにより、一次治療での生存期間の延長をもたらし、アジア全域の患者さんの転帰を改善するのに役立つ。
