介護・看護現場におけるケアの一助にも
ロート製薬は17日、高齢者を対象としたセラミド配合のスキンケア製剤(ボディウォッシュ・乳液)を用いた臨床試験を実施した結果、「日々のスキンケアがスキンフレイル関連指標改善を改善する傾向を示すことを確認したと発表した。
ドライスキンを有する高齢者を対象とした臨床試験により、ボディウォッシュと乳液を用いるスキンケアを4週間継続することでスキンフレイルのリスク(SFCスコア、SRRCスコア)が有意に低下し、角層水分量が有意に増加した。
同研究成果は、高齢者が日々のスキンケアを実践することで、スキンフレイルリスクを軽減する可能性を示すもので、今後、予防的スキンケアの啓発を通じて、高齢者の生活の質向上と看護・介護ケアをはじめとする社会全体への貢献が期待される。同研究成果の一部は、本年8月に開催された第 27 回日本褥瘡学会学術集会の共催セミナーで発表された。
日本は超高齢化社会を迎え、看護・介護の担い手不足が深刻化している。看護・介護現場では、皮膚裂傷や褥瘡などの皮膚トラブルが発生しやすく、治療には専門的な手技と長い時間を要するため、介護者の負担が大きいことが課題となっている。
高齢者の皮膚は、加齢に伴う乾燥や栄養状態の変化などにより皮膚バリア機能が低下し、わずかな刺激でも傷つきやすくなる傾向がある。こうした皮膚トラブルを防ぐために、日常的な皮膚観察や体位変換に加えて、「予防的スキンケア」を日常に取り入れる重要性が高まっている。
予防的スキンケアを行う上で鍵となるのが、「スキンフレイル」という概念だ。スキンフレイルとは、加齢や乾燥によって皮膚が脆弱化し、褥瘡のリスクを高める状態のことで、2019年に提唱された。スキンフレイルは、適切なスキンケアによって進行を遅らせることが可能(可逆性)とされており、日々のスキンケアが重要となる。
一方で、社内で実施したスキンフレイルに関する認知度調査(n=187)では、「スキンフレイルという言葉も意味も知らない」と回答した人が7割を超える結果となった。さらに、「言葉も意味も知っている」と答えた人の中で、スキンフレイルが予防可能であることを認識していたのは半数以下にとどまった。この結果から、高齢者が日々健やかに過ごすため、スキンフレイルにおける予防的スキンケアの重要性を社会全体に広く認知してもらう必要があると考察される。

図1:社員を対象としたスキンフレイルに関する認知度調査結果
今回、皮膚疾患を有しないドライスキンの高齢者を対象とした臨床試験を実施し、日々の予防的スキンケアの有効性を科学的に検証し、その重要性を社会に広く啓発することを目指した。臨床試験の結果は次の通り。
◆結果1 セラミド配合スキンケア製剤の使用で、ドライスキンを有する高齢者の SFC スコア、SRRC スコアが有意に低下した
セラミド配合スキンケア製剤の使用で、連用開始時(介入前)と比較すると連用4週間後(介入後)に SFC(スキンフレイルスクリーニングツール)と SRRC(ドライスキンスコア)の点が有意に低下し、スキンケア製剤の継続的な使用により肌のうるおいが高まり、ハリを与え、スキンフレイルリスクの低下が示唆された(図2、3)。

図2:SFCおよびSRRCによる肉眼的所見評価
※SFC合計スコアとは、乾燥およびハリ低下スコアの合計を指す

図3:被験者のSFC、SRRCのスコア変化と外観例
<試験方法>
皮膚疾患を有しないドライスキンを保持する計 19 名の 65 歳以上の男女を被験者とした。試験品であるセラミド配合のスキンケア製剤
(ボディウォッシュ・乳液)を、ボディウォッシュは入浴時に、乳液は毎日 1 回以上、自宅で使用して頂き、連用開始時(介入前)、連用 4
週後(介入後)に、前腕の状態の肉眼的所見を外部試験機関にて看護職者により評価した。評価には、SFC(スキンフレイルスクリー
ニングツール)と SRRC(ドライスキンスコア)を用いた。SFC は、「乾燥(6 項目)」と「ハリ低下(4 項目)」を「はい(1 点)」「いいえ(0 点)」
で評価し、その合計の点数が高いほどスキンフレイルのリスクが高いと判断する。SRRC も点数が高いほどドライスキン傾向にあると
判断する。(ロート製薬研究所で実施)(Mean±SE, **:P<0.01,Paired t-test)
◆結果2 セラミド配合スキンケア製剤の使用で、介入後に角層水分量の変化率が有意に増加
介入前と介入後を比較して、角層水分変化量の変化率が有意に増加していた(図 4)。

図4:角層水分量の変化
<試験方法>
被験者は自宅で試験品(セラミド配合ボディウォッシュ、乳液)を連用開始時(介入前) 、4 週間連用後(介入後)に、外部試験機関に
て前腕における角層水分量を Corneometer で測定した。介入前の水分量の平均を1とした場合の、介入後の変化率を求めた。
(ロート製薬研究所で実施) (Mean±SE,**:P<0.01,Paired t-test)
同試験結果は、高齢者が自ら日々適切なスキンケアを継続することにより、皮膚の健康維持やスキンフレイル予防に寄与する可能性を示唆するもので、介護・看護現場におけるケアの一助となることも期待される。
今後は、同研究の成果をもとに、深刻なスキントラブルを防ぐ取り組みへの応用を目指す。また、日用品によるセルフスキンケアの重要性を社会に広く伝え、高齢者が日々スキンケアへ取り組む意識の向上を図りながら、研究を継続。科学的根拠に基づく予防的スキンケアの普及を通じて、生活の質向上と社会への貢献を目指す。
