第一三共は20日、開発中の「DS-3939」(抗TA-MUC1抗体薬物複合体[ADC])について、P1/2試験の用量漸増パートデータを欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2025)で公表したことを明らかにした。
同剤は、抗TA-MUC1抗体を基盤とし、第一三共のDXd ADC技術を活用して創製された6番目のADCである。TA-MUC1は、多くの上皮がんにおいて過剰発現しているため、がん治療の有望な標的であると言われている。だが、現在のところ、TA-MUC1を標的として承認されているがん治療薬はない。
同試験は、日本を含むアジア、欧州および北米における局所進行・転移性・切除不能の固形がん患者を対象とした2つのパートからなるグローバルP1/2相臨床試験である。用量漸増パートでは、同剤の投与量を段階的に増やしながら安全性と忍容性を評価し、最大耐用量と用量展開パートにおける推奨用量を決定する。
今回発表されたデータでは、進行性固形がん(非小細胞肺がん、膵管腺がん、尿路上皮がん、卵巣がん、胆道がん、大腸がん、乳がん)患者64名において、同剤の安全性および予備的有効性を評価した。
安全性について、同剤の投与量1.0mg/kgから10.0mg/kgにおいて、用量制限毒性としてグレード3の貧血(1名)、腹痛(1名)、グレード4の血小板減少症(1名)が認められた。グレード3以上の有害事象は46.9%の患者に認められ、好中球減少症(15.6%)、貧血(10.9%)、肺炎(4.7%)等がみられた。
間質性肺疾患(ILD)については、7名(10.9%)がILD外部判定委員会により同剤と関連のあるILDと判定され、その内訳は、グレード2が6名、グレード3が1名であった。なお、ILD独立判定委員会の判定待ちであった2名が同解析後にグレード5(死亡)と判定された。
予備的有効性について、完全奏効は1名(卵巣がん)、部分奏効は10名(卵巣がん5名、非小細胞肺がん4名、乳がん1名)に認められ、病勢安定は39名であった。
第一三共は、進行性固形がん患者に新たな治療の選択肢を提供できるよう、同試験における用量展開パートへの患者登録を継続し、今後、同剤の効果が期待できるがん種を特定していく。