世界中の患者・家族の幸せに貢献し、挑戦する会社目指す JCRファーマ創立50周年記念式典で芦田信会長兼社長

 JCRファーマは28日、神戸市内のホテルで創立50周年記念式典・祝賀会を開催し、芦田信会長兼社長が「世の中の患者さん、ご家族の幸せに貢献しながら、これからも挑戦し続ける会社を目指したい」と抱負を述べた。
 JCRファーマは、1975年に日本ケミカルリサーチとして創業し、今年9月に創立50周年を迎えた。創業時は、ヒトの尿からウロキナーゼの原料を抽出し、販売する業務からスタート。その後、数名の研究者により、尿や血液の中からEGF、カリジノゲナーゼ、トロンボモジュリン(TM)、インターフェロンαなどの生理活性物質の抽出に成功し、臨床試験段まで進捗した。だが、その頃、ヒトの血液や尿には未知のウイルスの混入が指摘されたため、臨床結果は良かったものの開発は中止せざるを得なかった。
 また、1985年からヒト由来抽出型成長ホルモン「グロース」を販売したが、その数年後に世界中でヤコブ病が問題となり始め、そのリスクを回避するため、同社は、遺伝子工学を用いた医薬品の研究開発へとシフトして行った。
 その結果、1993年に遺伝子組換え天然型ヒト成長ホルモン製剤「グロウジェクト」の製造販売を開始した。2010年には、国産初のバイオシミラーのエリスロポエチンを開発し、「ダルベポエチン」などを発売。2013年には、世界初の他家由GVHD(移植片対宿主病)治療薬「テムセル」、2021年には世界初の独自の血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo」を適用した遺伝子組換えムコ多糖症Ⅱ型治療剤(ライソゾーム病治療剤)「イズカーゴ」を上市した。
 2023年度売上高は428億円。その内、グロウジェクト(179億円)、イズカーゴ(51億円)、テムセル(再生医療等製品、32億円)の主要3製品が62%占める。
 また、開発中の新薬としては、メディパルと海外事業化実施許諾契約等を締結しているGM2ガングリオシドーシス治療薬「JR-479」などがある。
 同社は、来年4月1日付けで芦田信代表取締役会長兼社長が取締役ファウンダーに退き、芦田透取締役専務執行役員(営業担当、営業本部長)が代表取締役会長、薗田啓之取締役専務執行役員が代表取締役社長に昇格する役員人事も発表している。

芦田信氏

 記念式典では、芦田信会長兼社長があいさつの中で、まず、「50周年を迎えられてのは、皆様の長年に渡るご支援とご愛顧、全従業員の尽力の賜である」と謝辞を述べ、「創業は、神戸市東灘区御影の倉庫のような場所から6名でスタートした。その後、ヒトの血液や牛の血清を使わない製造方法で、医薬品を作ることに挑戦し、研究・開発・販売まで自社で行える日本では数少ない製薬企業になった」と振り返った。
 加えて、「来年4月には、新社長、新会長の二人にバトンを引き継ぐが、創業当初から大切にしてきた研究に力を注ぎ、治療方法が未だ開発されていない疾患に領域に希望の光を届け、人々の期待に応える会社であり続けてほしい」と要望した。

本庶氏

 来賓祝辞では、ビデオメッセージにおいて本庶佑京都大学大学院医学研究科附属がん免疫総合研究センター長が、「私が芦田淳名古屋大学元総長の子息である信氏にお会いしたのは京大に着任して間もなくの頃で、芦田社長は私の持っていた起業家のイメージとは全く異なる欲のない爽やかな好青年であった」と強調。
 その上で、「尿から血栓溶解剤の原料を製造化する企業構想は大変興味深く、喜んでお付き合いさせて頂きたいと思った」と振り返り、「以後、ユニークなアイデアと他社とは異なる独自の企業観で順調に業績を伸ばされ、現在は、プライム市場に上場する立派な会社に成長された。心からお祝いを申し上げ、今後のますますの発展を祈念したい」と訴求した。

渡辺氏

 続いて、渡辺秀一メディパルホールディングス社長が登壇し、「創業者で50周年を迎えられる人を初めて見た。芦田信社長に敬意を表したい」と明言。
 さらに、「2017年にGSKからJCRの株式を23%、総額211億円で買う話が出た。医薬品卸が製薬企業の株を持つことはないが、誠実なお人柄の芦田社長のJCRファーマは応援したいと思った。私は、リンパ腫で入院し、本年7月24日に退院後、リハビリを行いどうしても本日の祝賀会にも出席したかった」と明かし、「ステークホルダーに対する芦田さんの想いを薗田新社長、芦田透新会長にも是非引き継いで頂きたい」と呼びかけた。

久元氏

 久元喜造神戸市長は、「JCRファーマは、1986年に西神工場を開設し、研究開発拠点、生産拠点として展開されている。また、神戸サイエンスパークセンターでは、総額40億円を投じて、再生医薬品開発のための研究拠点・生産拠点を構築して頂くことになった」と紹介。その上で、「神戸市は、当地で事業展開される企業のビジネス環境を少しでも改善され、未来に向かって挑戦できるように全力で取り組んでいきたい」と約束した。

高島氏

 高島崚輔芦屋市長は、「芦屋市に本社を置くJCRファーマは、地域の中に出て社会を良くする活動を熱心に展開しておられる」と感謝の念を述べ、「これからもJCRファーマのミライへの道程は続く。どうぞ芦屋市に本社を構え続けて頂きたい。我々も精一杯バックアップしたい」と訴えかけた。
 記念式典では、「創薬とAI」をテーマに、大上雅史東京科学大学情報理工学院情報工学系准教授、薗田啓之JCR取締役専務執行役員研究本部長、菅野泰功JCR研究本部基盤技術研究所副主任研究員によるパネルディスカッションを開催。その後、湊長博京都大学総長の乾杯の音頭で賑やかに50周年記念祝賀会が開宴した。

パネルディスカッション
祝賀会で乾杯の音頭を取る湊氏


    

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