武田薬品は19日、VELA社と事業提携し、ELA社の貨物三胴帆船を活用した欧州-米国間での自社医薬品輸送を世界で初めて実施すると発表した。
VELA社が設計し、今後運航を開始する新世代の貨物三胴船は、海上では100%風力で航行する。医薬品輸送専用に設計されたこの船により、VELA社は、信頼性と安全性に優れ、超低排出を実現した海上輸送を提供する。初航海は2026年後半を予定している。
風力を活用したこの新しい海上輸送は、製薬業界に向けた環境配慮型の選択肢となり、輸送に伴う温室効果ガス排出量を航空輸送比で最大99%、コンテナ船比で最大90%削減する。削減されない排出量は、主に港への着岸時に必要となる最小限のエンジン使用によるもの。
三胴船には、VELA社の「CoolSafe」が搭載される。これは、適正流通基準(GDP)に準拠した温度管理可能な冷蔵システムで、船上で発電された再生可能エネルギーによって稼働する。この海上輸送における革新的な仕組みにより、コールドチェーンの完全性を確保しつつ、製品の安全性と品質を維持するために必要な高度な物流性能を実現する。この新しい輸送ソリューションは、優れた運用と環境サステナビリティの両立を示すものだ。
武田薬品はグローバルバイオ製薬企業のリーダーとして、2040年までにバリューチェーン全体で温室効果ガス排出量をネットゼロにすることを目標に、事業活動や医薬品供給のあらゆる側面に気候変動への適応施策を組み込んでいる。 VELA社は、オフショアレーシング技術、直行航路、代替港での効率的な港湾運営といった強みを活かし、コンテナ船よりも短い15日以内での大西洋横断輸送実現を目指している。また、2028年までに三胴船を5隻に拡充し、年間4万8000トンの貨物輸送を計画している。
この三胴船は安定性を重視した設計により、水バラストを使用しない世界で唯一の貨物帆船となる予定だ。水バラストは異なる生態系に外来種を運ぶ可能性があるが、この設計では外洋に水を排出する必要がなく、海洋生物の多様性への影響を低減できる。風力三胴船による大西洋横断医薬品輸送は、事業活動を通じて自然保護を推進する武田薬品の取り組みにも合致している。
◆ザビエル・バヴィル武田薬品カスタマーエクスペリエンス、グローバル ディストリビューション&ロジスティクスヘッドのコメント
VELA社と我々は、事業をよりサステナブルにすることで地球を守り、革新をもたらそうという共通の情熱を抱いていると強く感じている。当社には、よりサステナブルで効率的な輸送手段を活用する戦略がある。帆船での輸送はその戦略を後押しする力強い一歩である。欧州-米国間を再び貨物帆船で航行させることは、チーム全員にとってまさに冒険であり、大きなモチベーションとなっている。
◆ピエール=アルノー・バロンVELA社CEOのコメント
武田薬品の価値観や歴史、そして卓越を追求する姿勢に我々も大いに刺激を受けている。今回の提携は物流の枠を超え、当社のミッションに新たな意味を与えるものだ。風の力だけで大西洋を越えて人々の暮らしを豊かにする医薬品を届けることは、サステナブルな事業活動が成し得る力強い証である。武田薬品とともに、効率的で、サステナブルで、安全かつ柔軟性のある海上輸送の新しい基準を築いていくのを楽しみにしている。